こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

君たちはどう生きるか

母が空襲で焼死した。疎開先で出会った父の再婚相手は母に似ている上、妊娠している。少年は転校先でさっそくいじめられる。物語は、都会からやってきた少年の、異界での奇妙な冒険を描く。森の奥には触れてはいけない秘密が隠されているらしい。使用人たちは近づくなという。だが、不気味なアオサギがしきりに少年をいざない、彼の好奇心は未知なる体験をしてみたいという誘惑に負ける。そしてその先で見たのはさまざまな次元に抜けるトンネルのハブとなる空間。そこでは常に命の危険が付きまとう。少年は相棒のアオサギと共に何度も命の危機に陥りながらそのたびに助けられる。自分がなぜ生かされているのか、その答えを探すためにさらなる危険に身を投じる少年の姿は、未来は自らの手でつかみ取るものだと教えてくれる。

戦争4年目、 マヒトは軍需工場を経営する父と共に田舎に移り住む。大きな屋敷では継母のナツコや使用人たちが出迎えてくれるが、アオサギがしきりに人語で話しかけてくる。

廃塔をみつけたマヒトは、消えたナツコを捜して塔の中に入り、さらに異次元への扉をくぐる。そこは鳥たちが人間を襲う世界。アオサギは下卑たオッサン顔をくちばしの間からのぞかせ、彼らの餌になるまいとマヒトに協力する。アオサギは信用できない。嘘ばかりつく。だが、「嘘をつく」と本当のことも言う。何を信じるべきなのかわからないままマヒトはさらなる試練にさらされていく。真実などひとつもない、それでもナツコを連れ戻そうとするマヒトの力強い瞳は、強固な意志こそが道を拓いていくと訴える。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

インコ屋敷で食われそうななった時、ヒミという少女に助けられるマヒト。彼女は純粋にマヒトを守ろうとし、マヒトもまた彼女を無条件に信じている。唯一信頼できるのは母の愛。マヒトはヒミと出会ったことで現実と立ち向かう勇気を得る。特にオチも教訓もない展開は、自分で石を頭にぶつけたマヒトの白日夢だったのか? マルチバースを寸止めしたのは宮崎駿の慧眼だった。

監督     宮崎駿
出演     
ナンバー     132
オススメ度     ★★★