こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

沈黙の艦隊

追ってくる敵にはモーツァルト交響曲で偽装工作し、偽の魚雷で重大な警告をする。攻撃してくる敵には、複雑な海底地形のみならず沈没船が進路を妨害する海域におびき寄せ実力差を見せつける。交渉には一切応じず、ただ自らの目的を達成するために突き進むのみ。物語は、反乱を起こした原子力潜水艦と乗組員に対する、日米両政府・海軍の対応を描く。元々は政界の黒幕による日本を自衛できる国にするための陰謀だった。だが理想に燃える艦長は黒幕の思惑に囚われず、さらなる高みを目指している。そして彼らの生け捕りを命じられた元部下と、排除を命じられた米国艦隊。すべては隠密裏に処理するはずだった計画が思わぬ破綻を見せ、実弾飛び交う戦闘に発展していく過程はスリリングで、21世紀の日本が近隣の覇権国家に対して何をすべきかを訴える。

海上自衛隊員が乗り込んだ米原潜が、艦長・海江田に乗っ取られる。日本政府は深町を海江田に接触させようとするが、米軍は太平洋艦隊を投入して原潜を沈没させようとする。

海江田は原潜をやまとと命名し独立国家を宣言、自ら元首に収まる。海江田は巧みに原潜を操り、日米艦の探索を巧みにかわしながら彼らを海の墓場に誘い込む。その戦いは、海江田が描いた絵図通りに展開しまるで彼の手のひらの上で日米首脳までが踊らされているようで痛快。決して犠牲者を出さないように寸止めする海江田の高等戦術には舌を巻く一方で眉に唾をつけたくもなった。その間、海江田は大義のためなら部下の命を切り捨てる覚悟を持つ人物であるエピソードが挿入され、現在の部下もそれを知って海江田と行動を共にしていることを示唆する。あくまで人間的な深町では海江田の相手にはならない。現場の指揮官としての優劣つけがたいが、理想を追う指導者としては海江田が適任なのは明白だ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

狭くて圧迫感があるとばかり思っていたが、現代の潜水艦は非常にスペースがゆったりと取られていたのが意外だった。

監督     吉野耕平
出演     大沢たかお/玉木宏/上戸彩/ユースケ・サンタマリア/中村倫也/中村蒼/水川あさみ/酒向芳/笹野高史/橋爪功/夏川結衣/江口洋介
ナンバー     178
オススメ度     ★★★


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