こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

イコライザー THE FINAL 

猫のように音もなく忍び寄り、虎のように一撃で仕留める。完全に気配を消し相手が気づいたときにはすでに致命傷を与えている元工作員の凄腕は今回も健在だ。物語は、海辺の小さな町に流れ着いた主人公がマフィアに苦しめられる住人たちのために一肌脱ぐ姿を描く。素手の格闘では神経結節を突いて痛めつけ、チンピラはナイフで自分を刺している。目にもとまらぬ速さでギャングの銃器を奪い取り銃弾を叩き込む。血祭りにあげられていく十数人の断末魔は外道にふさわしい。二重三重に伏線を張り巡らせ幾重にもどんでん返しを用意する近年のアクション映画とは違い、弱者をいじめる悪党を孤独な流れ者がやっつけるというシンプルな構成にむしろ好感が持てた。子供だからと油断するなとは学ばなかったのだろうか?

シチリアの麻薬組織を潰滅させたマッコールは南イタリアの小さな町で引退生活を楽しんでいたが、なじみになった人々が地元ギャングに虐げられるのを見て立ち上がる。

実業家という表の顔を持つマフィアのボス・ビンセントは立ち退きを渋る住民を平然と処刑したり、警察内部にまで深い根を張っていたりする。さらに爆弾テロを起こすなど、己の野心のためには堅気の民間人の命を顧みない。その弟は、正義感に燃える警官をリンチし家族を人質に取るなど卑劣な手段も厭わない。何をされても住民は泣き寝入りし、見て見ぬふりをするしかない。より暴力的な者が平穏な暮らしを望む人々からむしり取る、まるで「北斗の拳」のような世界。こんな無法が現代のイタリアでは許されているのだろうか。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

虎の尾を踏んでしまったビンセントは処刑されてから息絶えるまで6分間の時間を与えられ、その間苦痛に苛まれる。ケンシロウなら3~10秒なのだが、この悪党にはそのくらいの長さが妥当だ。全体的に派手なアクションはなく、デンゼル・ワシントンも年齢なりの動きしかできない。それでも、光と影を巧みに使い分け、あえてマッコールのスキルを小出しにすることで想像力を刺激する作品だった。

監督     アントワン・フークア
出演     デンゼル・ワシントン/ダコタ・ファニング/デビッド・デンマン/ガイヤ・スコデッラーロ/レモ・ジローネ/エウジェニオ・マストランドレア/アンドレア・スカルドゥッツィオ
ナンバー     183
オススメ度     ★★★


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