こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アナログ

約束の日に急にドタキャンしなければならない。だが連絡する手段はない。いや、その気になれば伝言は残せるが、あえてやらない。それがふたりのルールだから。物語は、ケータイを持たない女に恋をした男の苦悩と葛藤を追う。センスとこだわりに気づき理解しほめてくれた彼女は楚々として謎めいている。身の上話はしないけれど古典には造詣が深く、一方で世間ずれしていない。週1回の逢瀬、何度かすれ違いはあっても、会うたびに強烈な磁石に引き寄せられるように彼女のとりこになっていく。恋愛にも人間関係にもそれなりに経験を積んでいるはずのアラフォー男が、相手に嫌われたくないという思いからつい深読みし臆病になってしまう。そんな優しく不器用な主人公を二宮和也がシャイな面差しで繊細に演じていた。

設計事務所に勤める悟は、内装デザインを担当したカフェでみゆきと知り合い意気投合する。それ以降、毎週木曜日の晩にふたりはカフェでお互いを待つようになる。

あれほど美しい女が話し相手になってくれる。上品な物腰とピンと伸びた背筋、高度な教育を受けた者だけが持つ言葉の選び方話し方。しかも自分より背が高い。悟にとっては高嶺の花に見えたはず。なのにみゆきは悟の言葉にきちんと耳を傾け、時に的外れなことも言うがきちんと目を見て話してくれる。まるで10代の少年のように目を輝かせ胸をときめかせる悟。スマホなしの行き当たりばったりのデートはむしろ新しい発見に満ち、情報に踊らされている現代人への痛烈なアンチテーゼとなっていた。糸電話でお互いの気持ちを伝えるシーンは、コミュニケーションとは本来どういうものだったかを思い出させてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

みゆきへのプロポーズを決意した悟だったが、彼女はカフェに現れない。そして月日は流れ、もう忘れていたころに知った衝撃の真実。一方通行でも構わない、自己満足に見えてもいい。リアリティの乏しい奇跡だが、それでも愛を信じてみようという気持ちにさせてくれるベタな演出に、図らずも乗せられてしまった。

監督     タカハタ秀太
出演     二宮和也/波瑠/桐谷健太/浜野謙太/藤原丈一郎/坂井真紀/ 筒井真理子/宮川大輔/佐津川愛美/鈴木浩介/板谷由夏/高橋惠子/リリー・フランキー
ナンバー     185
オススメ度     ★★★


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