こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン

莫大な財産を持った娘に近づき愛をささやく男。彼女は彼の目的がわかっているが、ハンサムな顔と甘い言葉には抗えない。物語は、先住民が持つ石油利権を狙う白人米国人の葛藤を描く。世話になった叔父の命令は絶対。先住民の財産をすべて奪おうとする強欲で狡猾な男だが、地元の白人の間では圧倒的な信頼を得ている。そんな男の下で、主人公は愛と欲望を天秤にかけ、徐々に良心を失っていく。最初は強盗だった。だが、殺人を苦にしなくなるまで時間はかからない。叔父に命じられるまま競合相手を暗殺し、相続権を持つ女たちを死に追いやっていく。先住民やチンピラの死に関心を持つ白人はいない。そして彼の妻は日々衰えていく。スコセッシの重厚な画作りとディカプリオ&デ・ニーロの圧倒的な存在感が、時間を忘れさせてくれる。

第一次大戦から復員してきたアーネストは叔父・ヘイルの下で働き始める。アーネストは石油受益権を持つインディアン・モリーに近づき、結婚を申し込む。

はるか地平線の先まで油田ポンプが設置されている大平原。すべてはインディアンの土地で、彼らは働かなくても裕福な暮らしを享受している。男は酒とギャンブルに溺れ、女はスイーツの食べ過ぎで糖尿病になっている。おこぼれにあやかりたい白人たちが町にあふれ、男も女も受益権を狙ってインディアンに近づく。ヘイルは両者を巧みに操り、地元の有力者に収まっている。モリーはアーネストの企みに最初から気づいているが、一方で愛されていると信じている。アーネストは積極的にインディアン語を学び、子供には情が移っている。だが、モリーの糖尿病を利用しようとするヘイルの影響からも逃れられない。そのあたり、モリーの何を信じていいのかわからない苦悩と、アーネストの善人にも悪人にもなり切れない複雑な感情がリアルに再現され、人間の “業” の深さをあぶりだしていく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて、FBIが捜査に乗り出すと、ヘイルの悪事が次々と暴かれていく。その一部始終を再現したラジオドラマも秀逸な趣向だった。

監督     マーティン・スコセッシ
出演     レオナルド・ディカプリオ/リリー・グラッドストーン/ジェシー・プレモンス/ロバート・デ・ニーロ/タントゥー・カーディナル/カーラ・ジェイド・マイヤーズ/ジャネー・コリンズ/ウィリアム・ベルー/タタンカ・ミーンズ/ジョン・リスゴー/ブレンダン・フレイザー
ナンバー     194
オススメ度     ★★★★


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