こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

おしょりん

深い雪に閉ざされた冬、男たちは出稼ぎに女たちは内職に勤しんでいる。そんな時代、安定した収入を得るために新たな事業にチャレンジした男たちがいた。彼らを支えるのは、出資者の気丈な妻だった。物語は、20世紀初頭の福井で特産品となる眼鏡フレーム作りの基礎を築いた人々の奮闘を追う。細かい作業をできる者は一人もいない。他の工房で職人を修行させ、親方クラスの技術者を招いて基礎を学ぶ。まだ田舎では眼鏡の存在すら知らない人達ばかり、頭脳明晰なのに近眼ゆえに学校の勉強についていけなかった少女が視力を矯正すると世界が変わるシーンが、啓蒙とは知識を身に着けることだと訴える。冒頭で本編とはほぼ無関係の福井県のPR動画を10分以上延々見せられ閉口したが、こんなこと誰が許したのだろう?

村の庄屋の長男・五左衛門に嫁いだむめは、次男の幸八が語る眼鏡産業の夢に胸を躍らせる。渋っていた五左衛門も出資を決意、村の若者たちを集め、技術指導者を招いて工房を開く。

眼鏡どころか金属加工すら初めての若者たち。素材を融解し型にはめ細く均一に展ばしていく。その過程で何度も失敗を重ね、そこから学んでいく。だが、なんとか作り上げたフレームを大阪の眼鏡屋はほとんど買い取ってくれない。それどころか時代遅れと指摘され、新たな素材に挑戦するためにさらなる投資が必要とされる。五左衛門は家財寝所土地をすべて抵当に入れて資金繰りに奔走するが、なかなか商品になる出来栄えのモノは作れない。せっかく起業しても持続するのは至難の業という現実が彼らにのしかかる、経営者の苦悩がリアルに再現されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

大阪で開かれる博覧会に出品して知名度を上げようと決意した五左衛門は、かつて落ちこぼれ職人だった八郎の実用一辺倒ではなく装飾を施したファッショナブルなフレームに目を見張り、工房の出品作とする。そのシーンは、顔の印象をエレガントにもブリリアントにも変える眼鏡の価値を再発見させてくれる。

監督     児玉宜久
出演     北乃きい/森崎ウィン/駿河太郎/高橋愛/津田寛治/榎木孝明/東てる美/佐野史郎/かたせ梨乃/小泉孝太郎
ナンバー     199
オススメ度     ★★*


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