こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

最悪な子どもたち

チンピラ然とした少年、大人を信用していない小学生の男の子、素行不良と思われている女子高生etc. まっとうな未成年の道からはじき出された彼らは素直な心を失っている。物語は、貧困地域を舞台にした映画を撮影しようとする監督とオーディションで選ばれた少年少女たちの葛藤を描く。大人に反抗するのがクールだと思っている少年はことあるごとに悪態をつく。うまく感情を出せない男の子は監督の指示と逆のことをする。ビッチと呼ばれている少女はからかわれて喧嘩になる。他者への敬意や公共のマナーを身に着けていない彼らは、監督の言うことなど効かずやりたい放題。その組織崩壊ぶりは、やらせノンフィクションとして一世を風靡したTOKIO国分太一の「ガチンコファイトクラブ」を思い出させる。

演技経験ゼロの少年少女を集めたオーディションに合格したジェシー、ライアン、リリ。3人を中心に監督・ガブリエルは撮影を始めるが、ガブリエルはなかなか彼らを制御できない。

ジェシーは気分屋でいい映画を作ろうという気があるのかないのかわからない。ライアンはケンカのシーンで本気になったことで演じる楽しさがわかり始めている。リリはガブリエルと話すことで自分を信じられるようになる。芝居がかったセリフやシーンは一切なく、ガブリエルが1本の映画を撮影していく様子をドキュメンタリータッチでとらえた映像は、「映画監督が素人俳優だけを使って現代の『大人は判ってくれない』を撮る」というのがこの作品の設定なのを忘れるくらいリアリティに満ちていた。「演技の初歩すら知らない少年少女」を演じる少年少女たちは、本当に素人とかと思えるほど感情と表情を巧みにコントロールしていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ラストシーンの撮影も無事終わり、俳優たちはみな日常に戻っていく。リリは弟を亡くした悲しみを乗り越え、ライアンは表情豊かな子供になっている。市井の人々を演じるのに演技が必要なのか、それとも素のままのような演技をしているだけなのか。思考が袋小路に入ってしまう作品だった。

監督     リーズ・アコカ ロマーヌ・ゲレ
出演     マロリー・ワネック/ティメオ・マオー/ヨハン・ヘルデンベルグ/ロイック・ペッシュ/メリーナ・ファンデルプランケ/レミ・カミュ
ナンバー     225
オススメ度     ★★★


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DATE     23/12/13