こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました

偶然拾った宝くじが1等に当選していた。気持ちが浮つきなにもかも手がつかなくなった。でも油断していたら風に吹かれて国境の向こうまで飛んでいった。そこは地雷原を挟んだ敵対国。物語は、宝くじを取り戻したい韓国軍兵士と換金したい北朝鮮軍兵士が大金を手に入れようと奔走する姿を描く。くじの所有権をめぐってひと悶着あったあと、お互いに協力しなければ何も得られないと気づいた双方は信用を担保するために人質をひとりずつ差し出す。人質を生きて返すには保護が必要、自然と相手を理解しようと努め、欲から生まれた人間関係はいつしか友情に変わっていく。同じ言語の同胞が体制の違いだけで憎しみ合うバカバカしさをコミカルに再現し、にらみ合いも70年続くと日常となり実は現状維持こそが安定という朝鮮半島の現実を強烈に皮肉っていた。

韓国軍国境警備兵のチョヌは宝くじを探しに非武装地帯に侵入、宝くじを拾った北の兵士・ヨンホと出会う。双方士官と仲間を連れ、後日秘密の給水所で3対3の会談が開かれる。

南北とも相手が飲めないような条件を主張し合うが、実は落としどころを探っている。強がっていてもどこかで妥協しなければ、皮算用が泡と消える。偶然現れた仲介者の提案で合意が成立するが、その後酒盛りをするともはや兵士ではなく普通の人間として相手を認め合う。北の情報担当官がK-POPダンスを披露すると6人全員がノリノリになって踊り出すシーンは、自由を求める気持ちはイデオロギーでは変えられないことを象徴する。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

人質として、チョヌは北の、ヨンホは南の新兵としてそれぞれの部隊に潜り込む。ところが2人とも思わぬ手柄を立ててしまい英雄扱いされる。正体がバレると命のない2人が解決策を模索するシーンはそれぞれギリギリの緊張感の中にユーモアを挟み、つい笑いを漏らしてしまった。換金役の兵士がソウル市内で変態扱いされどこまでもSNSで追跡されるが、今や韓国は北朝鮮以上にプライバシーのない相互監視社会になっているということなのか。。。

監督     パク・ギュテ
出演     コ・ギョンピョ/イ・イギョン/ウム・ムンソク/パク・セワン/クァク・ドンヨン/イ・スンウォン/キム・ミンホ
ナンバー     236
オススメ度     ★★★*


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