こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

プロメテウス

otello2012-08-06

プロメテウス PROMETHEUS

オススメ度 ★★*
監督 リドリー・スコット
出演 ノオミ・ラパス/マイケル・ファスベンダー/シャーリーズ・セロン/ガイ・ピアース
ナンバー 194
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

人間はなぜアンドロイドを作ったのかと問われ「作る能力があるから」と応じる乗組員。では、神が人間を生み出したのも同じ理由なのか。遥か銀河の彼方の惑星に答えを求めてたどり着いた人々はそこで驚愕の事実を目撃する。地球に似た環境、古代建造物、神殿のような内部の空間、人間と酷似した知的生命体。映画は進化論を大胆に踏み外した上で“神”の正体を暴露しようとする。アンドロイドにとっての創造主が人間であるのと同様、人類の創造主もまた感情に溺れる生き物だったと知る過程で、“神は自らに似せて人間を作った”というキリスト教的概念を踏襲しつつ、神の存在を否定していく。

「人類の起源」となった異星人・エンジニアに会うために長い旅をする宇宙船・プロメテウス号は目的地に到着する。考古学者のエリザベスは地表の巨大人工物からエンジニアの死体を回収するが、アンドロイドのデヴィッドも密かに微生物の入った壺を持ち帰る。

壮大かつ峻嶮な太古の地球に舞い降りたエンジニアが自分の肉体を分解してDNAの種をまくプロローグは、あらゆる天地創造神話を凌駕する神秘的な美しさ。一方で人頭型のオブジェが飾られているかと思えばエンジニアの遺体が散乱する遺跡は、悪意と恐怖が充満した静寂の暗渠。その、生命と死を鮮やかに対比した圧倒的な映像は目を見張る。ところが核心に近づくにつれ、クルーたちは“神の領域”に足を踏み入れたはずがそこは地獄だったと気づき、裏切られた気持ちになっていく。彼らの失望は、この作品に「イマジネーションを超越した荘厳な未知の次元」に連れて行ってもらえると期待していた観客の思いと共通していたのではないだろうか。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

結局、エイリアンと人間はともにエンジニアにデザインされた兄弟なのだ。艶めかしく黒光りする成獣の力強く佇立する姿が、生きることは他者の命を奪い続けることだという人生の真実を訴え、神の不在を宣言しているようだった。

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