こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

キャラクター

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両親と2人の子供が切り刻まれて息絶えていた。恐怖と無念の表情で椅子に縛り付けられていた。血だまりの中で凄惨な現場に出くわした男は、目の前の光景に創作意欲を掻き立てられる。物語は、大量殺人をテーマにした漫画で人気を得た作家と、その描写をなぞる連続殺人鬼の暗闘を追う。殺人シーンにリアリティがないと才能を否定された作家は、目撃体験を機に急成長する。運命的なつながりを感じた殺人鬼は、絶妙の距離感で作家に近づいては警察を翻弄する。やがて起こった第二の事件。作家はおののき、警察はふためき、殺人鬼はほくそ笑む。ケント紙にペンで線を入れ、インクを散らして血しぶきを再現する。主人公が全霊を込めて描きこんだ画は映像を凌駕する迫力。想像だけでは物足りない、実体験こそがフィクションに命を吹き込むとこの作品は教えてくれる。

一家惨殺事件をテーマにした連載で、圭吾は一躍人気漫画の仲間入りをする。山奥で起きた2件目の一家惨殺事件は、圭吾が発表したエピソードとディテールまで一致していた。

圭吾は犯人の顔を知っているのに、事件と連載の関連に気づいた刑事・清田には話さない。一方で両角と名乗る犯人は圭吾の身辺に出没し始める。なぜか圭吾の行く先々に現れ、圭吾に対して尊敬とも優越感とも取れる態度で接してくる。使う凶器は包丁だけ、古いアパートに住み、他人とは電子機器ではなく手紙でやり取りするローテクぶりだが、現代ではその方がかえって警察に追われにくいのだろうか。両角の神出鬼没ぶりはハンニバル・レクター並み、ところが配送トラックを事件現場のすぐそばに停めていたりもする。そのあたり、天才なのか間抜けなのかわからない不可解なキャラクターが不気味だった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

両角に共犯者扱いされた圭吾はビビッて清田に事情を話す。さらにこれ以上殺人に加担できないと、やさしい常識人の一面も見せる。そして迎えた連載の最終回。どうせなら両角という悪魔に魂を売って、殺人をアートに昇華する覚悟を見せてほしかった。

監督  永井聡
出演  菅田将暉/Fukase/高畑充希/中村獅童/小栗旬/中尾明慶/松田洋治
ナンバー  106
オススメ度  ★★*


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