百年の時計
監督 金子修介
出演 木南晴夏/ミッキー・カーチス/中村ゆり/鈴木裕樹/宍戸開/水野久美/井上順
ナンバー 128
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
遠い過去に置き去りにしていた記憶。それは男にとって甘く切ない、結ばれなかった初恋の思い出。彼女の面影と共に時を刻み続ける懐中時計だけが、その愛が確かに存在した証拠。物語は世界的アーティストが故郷・高松で個展を開くために帰郷、彼を招聘した若き美術館員と青春を振り返る過程を描く。ワガママで気まぐれ、常にヒロインや関係者の反応をみるような言動で心に抱える寂しさを隠さない。そんな屈折しているが純粋な老人をミッキー・カーティスが飄々と演じる。一見いい人に見えて底意地が悪い面もある、齢を重ねた男の味わいをコミカルに表現していた。
気難しさで有名な現代アートの巨匠・安藤の個展の責任者・涼香は、安藤から50年前に見知らぬ女からもらった懐中時計を見せられ、彼女を捜してほしいと依頼される。記録を調べ知己を頼り、由紀乃という名は判明したが不貞で離縁された後消息を絶っていた。
安藤は、この“探偵ごっこ”を通じて涼香の自分への忠誠心を試す。合格した涼香は安藤の青春の蹉跌を聞かされ、“時間と記憶”の積み重ねこそが人生であり、それを実感させるアートが今の高松に必要と知る。涼香と安藤はそのコンセプトで電車の車両を使ったインスタレーションを企画、上司を説得し関係各所に協力を仰ぎ県知事に直談判に行く。2人の仕事に対する情熱はハラハラさせられつつも応援したくなる。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
そしていよいよ展示列車が走り始める。100年前の琴平電鉄開業の日から戦争に引き裂かれた老婆の愛などが車内で再現される。それらは人の記憶というより琴平電鉄の車両が見つめてきたご当地の歴史。だが、時代が下るにつれて地元と密接に関連した出来事は乏しくなり、尻すぼみ感は拭えない。万博やバブル景気、JKブームや東日本大震災ではなく、もっと高松や香川県に限定したトピックがなかったのだろうか。ここがクライマックスなのだからもう少し手間ヒマかけてほしかった。
オススメ度 ★★