こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

0.5ミリ

otello2014-11-11

0.5ミリ

監督 安藤桃子
出演 安藤サクラ/津川雅彦/坂田利夫/柄本明/草笛光子
ナンバー 262
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

独力では立てず性欲だけが残った男、ひとり暮らしでコツコツ小金を貯めている男、心身の衰えを認めないプライドの高い男。後期高齢者となり、いわゆる認知症を発症している彼らは、それでも生にしがみついている。もはや世間からも肉親からも必要とされていない、だからこそ己がまだ存在していと主張し続けている。物語は彼らの身の回りの世話をする女の目を通して、生きる意味を問うていく。萎みゆく日常に突然闖入してきたヒロインに、老人たちは最初は拒絶し疑うが、いつしか彼女を受け入れてしまう。天使なのか悪魔なのか、何か企みを含んだ笑顔を絶やさない介護士を安藤サクラが肩の力を抜いて好演、問題を解決して去っていく姿はさすらいのヒーローのようだ。

介護先の老人に“添い寝”した夜ボヤを起こし、仕事も住処も失ったサワは、自転車にイタズラする茂を脅して強引に同居する。茂は詐欺師に虎の子を狙われているのに、相手の言葉を完全に信用していた。

詐欺師は“話をよく聞いてくれる”と茂は言う。茂にとって孤独を癒してくれる唯一の友人、サワが騙されていると教えても頑なに否定する。家族からも行政からも見放され情報も遮断された茂はカモにされる独居老人の象徴だ。その後、サワが押し掛けた元高校教師は壊れゆく自我を守ろうと戦っているのに、他人に知られまいと必死でカムフラージュしている。そんな、ボケたから発露する人間の本性をカメラは丁寧に掬い取る。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

そして、“添い寝”老人の家にいた10代の子供と再会したサワは、今度はその子が父と住むあばら家に転がり込む。そこで知った衝撃の真実、サワは初めて未来のない老人ではなく、将来のあるティーンエイジャーの面倒を見ようとする。混沌に秩序をもたらし絶望を希望に変えていく、サワが捨てずに持っていた赤いワンピースが、授かった命に値する人生はきっと見つかるというメッセージを強烈に発していた。

オススメ度 ★★★

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