こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

謝罪の王様

otello2013-09-30

謝罪の王様

監督 水田伸生
出演 阿部サダヲ/井上真央/竹野内/岡田将生/尾野真千子/高橋克実/松雪泰子
ナンバー 238
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

ただきちんと謝ってほしかっただけ。相手の思いに気づかず謝罪のタイミングを逃し、いたずらに事をこじらせる。映画は “謝罪の言葉を口にしたら負け”という米国流の悪しき習慣に染まってしまい、道や電車で他人にぶつかっても知らんぷりし、失敗しても自分の落ち度を認めようとしない昨今の日本人に、「ごめんなさい」は社会生活の潤滑油だと再認識させてくれる。阿部サダヲの大仰な演技は小劇場の芝居には向いているが、スクリーンに投影されたアップはくどすぎる。ずっとそう思っていたが、本人に代わりに許しを請う専門家を演じるこの作品では、押し出しの強い土下座こそが役に立つと納得させる説得力があった。

依頼人の代理で係争相手の怒りを鎮める謝罪師・黒島は、ヤクザと交通事故を起こした典子を助けたことから彼女を助手に雇う。典子はセクハラで訴えられた会社員のケースを担当するが交渉は難航、黒島が奥の手を使って見事に訴訟を取り下げさせる。

その後も芸能人夫婦の謝罪会見、やり手弁護士と娘の不和の修復など難問を解決していく。その過程で黒島は依頼人が抱える事情に深く立ち入っていくわけだが、彼らはみな悪意があるのではなく、反省の気持ちを表現するのが下手なだけなのだ。しかも、もう手遅れなのではとあきらめてかけている。黒島はそんな彼らに、どうすれば相手の心を開けるかをレクチャーする。そのあたりをあくまでコミカルに処理し説教くささを消しているが、黒島のノウハウは実生活で応用できるほど具体的で、思わずメモしたくなった。さらに他国との外交問題を一任されたりもするが、そこでも重大な過失ほど素早く誠意のこもった対応を見せる大切さを説く。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

互いに無関係に見えるそれぞれのエピソードの依頼人同士が実は細い糸で繋がっていたり、何気ないシーンが別のシーンの伏線になっているなど、宮藤官九郎の脚本は熟練のテクニックみせる。特に少女が口ずさむ「わき毛ボーボー自由の女神」が頭から離れなかった。。。

オススメ度 ★★★

↓公式サイト↓