こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

テルマエ・ロマエII

otello2014-04-29

テルマエ・ロマエII

監督 武内英樹
出演 阿部寛/上戸彩/北村一輝/竹内力/ 宍戸開/笹野高史/市村正親/キムラ緑子
ナンバー 99
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

21世紀の入浴文化を2世紀のローマ人が体験する姿を通じて、洗練された文明と道徳、平和を愛する日本人の心を再発見するという構成は前作と同様。今作はさらに巨大なコロッセオや総合レジャーランド化した入浴施設、騎兵歩兵が相乱れる戦場まで再現し、実写とCGを合成させた映像はスケールアップしている。物語は主戦派に牛耳られつつある祖国にテルマエの効能で和平をもたらそうとする技師の奮闘を描く。足ツボ押し、マッサージチェアバスクリン、滑り台、樽風呂、混浴といった小ネタの数々が相変わらず鋭い冴えを見せ、異邦人の目には奇異に映る日本の“普通の光景”を笑いに昇華する。書割の前で俳優が演技するようなローマのシーンが独特の雰囲気を放つ。

真実たちの協力で様々なテルマエを設計し名声を得たルシウスは、皇帝から“テルマエのユートピア”作りを命じられる。だが、皇帝の後継者のケイオニウスは病に倒れ、対立する元老院は偽ケイオニウスを担ぎ上げて侵略戦争の機運を高めていく。

単なるテルマエではなく、湯池場をプロデュースするルシウス。温泉を掘り当てた上で、熱湯を適温に冷まし疾病や疲労を癒す場所も設けなければならない。長期滞在者向けの食堂や娯楽も必須、ルシウスは草津温泉を手本に新テルマエを計画する。古代ローマ人を例に持ち出すまでもなく、温泉でゆっくり手足を伸ばせば人種を問わず心身ともにリラックスできるはず。こういった温泉街は日本特有のものなのだろう、もしかして温泉街のシステム自体を輸出すれば、語義は矛盾するが“クールジャパン”として海外でも受け入れられるかもしれない。そんなビジネスモデルを映画は提起する。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

真実から己の運命を聞かされたルシウスは、それでも「命を惜しむより為すべきことに命を賭ける」と、死を恐れず自らの使命を全うしようとする。夢を追い実現してこその人生、ルシウスの熱い思いがこの壮大なほら話からあふれ出ていた。

オススメ度 ★★★

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