こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

円卓 こっこ、ひと夏のイマジン

otello2014-06-24

円卓 こっこ、ひと夏のイマジン

監督 行定勲
出演 芦田愛菜/平幹二朗/いしだあゆみ/八嶋智人/羽野晶紀/青山美郷/伊藤秀優
ナンバー 146
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

メバチコ、吃音ボートピープル不整脈、在日・・・。自分や家族にはないものはすべてカッコいいと思う少女は、新しく耳にした非日常の言葉をノートに書きためていく。もう身の回りのことはひとりでできる、世の中の仕組みも少しは理解した。だからまだまだ知らない現実がたくさんあると気づき、忘れないようにしているのだ。物語はそんな小さなヒロインが様々な体験を通じて、他人への思いやりを学んでいく姿を描く。裕福だが両親の中が悪いクラスメート、隣家とベランダが向かい合ったアパート、冷えたカルピスの味、秘密がいっぱいの自由帳、夏休みのウサギ小屋、お母さんのおなかの赤ちゃん。何より一家8人で囲む円卓の上にあふれる愛と優しさが胸にしみる。

祖父母両親三つ子姉と公団住宅で暮らすコッコは幼馴染のポッサンと大の仲良し。ある日、大切にしていたノートが無くなり、パニック状態になる。そこに母が妊娠を発表するが、コッコは全然うれしくない。

小学3年生、まだ男女の性差をそれほど意識する年齢ではなく、コッコとポッサンは兄弟のようにいつも行動を共にする。「うっさい、ボケ!」毒づくコッコに対し、ポッサンは吃音をからかわなかったコッコを信頼している。だが、なんでも打ち明けられる関係もあと2〜3年で終わり、やがて親友ではいられなくなる日がやってくる。それがわかっているからこそ、ふたりだけの時間がかけがえのないものに思えてくる。太陽の塔の近くの原っぱで蚊を採集するふたりの遠景ははどこか思い出のような郷愁を帯び、見る者の心を過ぎ去った子供時代へと誘う。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

昨日と違う今日、今日と違う明日という時の流れのなか、日々発見を繰り返して“イマジン”を身に着けたコッコとポッサンは、たったひと夏で学校嫌いな女子のために素敵な贈り物を用意するまでに成長する。散文的なエピソードの連続は絵日記のようなブツ切り感を伴うが、個性的なキャラクターが最後まで楽しませてくれた。

オススメ度 ★★*

↓公式サイト↓