あいときぼうのまち
監督 菅乃廣
出演 夏樹陽子/勝野洋/千葉美紅/黒田耕平/雑賀克郎/安藤麻吹/わかばかなめ/大谷亮介/大池容子
ナンバー 147
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
「原子力 明るい未来のエネルギー」。標語に踊らされて人生を狂わせていった一家は、21世紀においても放射能の脅威に怯えながら暮らしている。自ら死を選んだ者もいる、非業の死を遂げた者もいる、しかし残された者はトラウマを抱えて生きていかなければならない。物語は第2次大戦末期、高度成長期、東日本大震災を挟んだ現代の3つを舞台に、“核”に翻弄された一族の生き方を追う。ウラン採取、原発誘致、そして放射能汚染。国策という強権の元に徐々に故郷を侵食され未来を狭められた福島県民の怒りとあきらめ、結果的にカネと職場を与えられ飼いならされてしまった彼らの心の叫びが、映像にこだまする。
1945年、ウラン鉱山で働く英雄は上官と母の交情を目撃する。1966年、原発反対派の英雄は、村で孤立した娘の愛子に何もしてやれない。2013年、東京で避難生活を送る愛子の孫・玲は援交を繰り返すうち不思議な青年と出会う。
英雄の母は将校から食糧援助される代わりに“現地妻”となり、愛子は漁師小屋で恋人と抱き合い、玲は寂しさから春をひさぐ。自分を大切にしない女たちはセックスに救いを求めるが決して気持ちが満たされることはない。映画はそれらの原因をすべて“原子力”に帰する。食料や補償金、地域振興といった、魂を売った見返りの“毒饅頭”を一度口にした者は、死ぬまで、いや死んでからも子や孫の代まで呪われるのだ。その恐ろしさがじわじわとスクリーンから拡散していく。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
前半は時代が頻繁に入れ替わるため、ストーリーの流れがぶつ切りになり、非常にわかりづらい。それは平穏な日常を奪われた人々の混乱した胸中を象徴しているのだろう、後半になって一連のつながりが理解できるようになると、彼らの人間的な弱さが浮き彫りになる効果を、一応、生んでいる。ところが、各エピソードとも問題点に対する掘り下げが甘く、結局どのキャラクターにも共感できなかった。唯一、愛子の最期を知る人のおかげで玲の自責の念が晴れるあたりが、仕掛けとして面白かったが。。。
オススメ度 ★★