こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

メイズ・ランナー

otello2015-04-09

メイズ・ランナー THE MAZE RUNNER

監督 ウェス・ボール
出演 ディラン・オブライアン/カヤ・スコデラーリオ/トーマス・ブロディ=サングスター/キー・ホン・リー/ウィル・ポールター/アムル・アミーン/ブレイク・クーパー
ナンバー 76
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

気が付くと檻の中。なぜそこにいるのか、どれくらい眠っていたのか、そもそも自分が何者なのか覚えていない。物語は、巨大な壁に囲まれた空き地に住む数十人の少年たちの前に放り出された主人公が、サバイバル能力を身につけていく過程を描く。脱出口は壁の向こうの迷路の先、だがその道順は夜毎に変更され、迷った者は怪物の餌食となる。原始的な道具しかないなか、役割を分担し協力して窮地を抜け出そうとする様子はテクノロジー万能の21位世紀と対極をなす。ところが、こんなシチュエーションゆえに、彼らは生の感情を直接ぶつけ合う。それは皮肉なことに、ネットを介しての対人関係よりも濃厚でまともな信頼を築けるのではと思わせる。

小さなコミュニティで目覚めたトーマスはリーダーのアルビーから迷路の説明と集団生活のルールを知らされる。あくまで脱出を主張するトーマスは迷路の中で経路を探る“ランナー”に志願、先輩ランナーのミンホと共に迷路に入る。

3年以上ここで暮らしながら効果的な打開策のないアルビーたち。秩序を重んじ変化を嫌うギャリ―のような構成員まで生まれている。迷路の壁が移動する地鳴りにも似た音よりも、いつしか壁の中で飼いならされてしまった心が恐ろしい。いや、むしろ環境に適応したと取るべきなのか。そんな、精神力の強さと弱さが入り混じった人間模様がリアルだ。現状を変えたいトーマスは異分子として扱われるが、迷路の中でアルビーの命を救い怪物を倒したのをきっかけに同調者も生まれる。皆、ここに来る前の記憶は消されている。それでも、外で待っているはずの愛する者ともう一度会いたいと願う気持ちに衝き動かされるのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて迷路の全貌をつかみ出口を見つけたトーマスらは10数人を引き連れて怪物の待つ迷路に入る。クモとサソリを合体させた体を持つ怪物の群れを手製のヤリで撃退するトーマスたち。極限状態で試される肉体と精神、そしてこれは始まりに過ぎないという驚きに、次回作への期待が高まる。

オススメ度 ★★★

↓公式サイト↓