こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ランサム

女子大生が拉致された。犯人は拳銃で武装した5人組の男。脅迫状はSNS経由だが追跡できない仕掛けが施されている。物語は、大物ブローカーの娘を誘拐した犯行グループと組織の駆け引きを追う。計画は完璧だった。警察は介入させたくない。血も流したくない。カネの受け渡しは周到に準備され、相手に素性を知られることはなかった。だが、ちょっとしたミスが命取りになっていく。強欲なブローカーに復讐するつもりがいつしか追い詰められ、ひとりまたひとりと壮絶に血糊をぶちまけて息絶えていく姿はB級映画の正統路線を行く。一方で、欲に目がくらんだ男たちが直面する二重三重のどんでん返しは大いに楽しませてくれたが、ディテールの詰めが甘く劇場公開のレベルに達していない。今どき人質がトイレの窓から逃亡するなんて信じられなかった。

バイオリンを専攻する音大生・由美を監禁した兵頭らは、父親の金山に身代金として1億円の現金を要求する。彼らはみな金山に恨みを抱き、復讐の機会をうかがっていた。

身代金受け渡しには細心の注意を払う兵頭たち。現金入りケースを運ぶ金山の秘書にクルマを乗り換えさせ、なんらかの追跡装置が仕込まれていることを想定して札束を詰め替えさせ、さらにパンツ一丁にさせて受け渡し場所に誘導する。そのあたり、計画の立案者である兵頭は頭脳明晰、さらに由美の扱いにも気を配る冷静さも持ち合わせている。かつて誘拐に加担し失敗した経験を生かす理性もある。この男と韓国人のソジョン、ハッカーの児島は責任感が強く実行力もあるが、あとの2人は短絡的なチンピラとカネの亡者。犯罪を成功させるにはまずメンバーを厳選すべしとこの作品は教えてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

なんとか身代金は手に入れるが、グループ内に裏切り者がいることが発覚、内紛が起きる。さらに裏切り者の手引きで踏み込んできた悪徳刑事2人も加わり、壮絶な銃撃戦になっていく。そこでも、兵頭を挟み撃ちにした刑事らが、お互いが射線上にいるのに兵頭に向かって発砲したりして興ざめした。

監督     室賀厚
出演     ユン・ソンモ/小沢仁志/吉田玲/中村優一/寺中寿之/長濱慎/紺野千春/坂巻有紗/永倉大輔
ナンバー     136
オススメ度     ★★


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