こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

盲目のメロディ インド式殺人狂騒曲

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目の前に死体が転がっている。女は取り繕い男はスーツケースで死体を運び出そうとしている。目が見えないと偽っている青年は危険を感じ、目撃した事実を黙っているしかない。物語は、“音楽に集中するため” に視覚を封じて生きてきたピアニストが殺人事件の現場に遭遇、口封じに命を狙う犯人たちから逃走する過程を描く。後手後手に回るうちに追い詰められ、間一髪のがれてもまた別のピンチにさらされる。煮え切らない主人公は、それでも腹を括れない意気地なし。やっとつかんだ反撃の機会も別の悪党に利用されるばかり。手垢のついた勧善懲悪の展開にはせず、次から次へと嘘と裏切りが彼を襲い、まったく先が読めない。インド映画らしく脇の甘いところがあると思えば、一方で簡単に人が死ぬ。なかなか味わえないテイストの作品だった。

視覚障碍者のふりをしているアーカーシュは、演奏を依頼されたシミーの高級アパートで、彼女の夫の死体を見つける。通報するために警察に行くと、署長がシミーの愛人で、死体は見えていなかったととぼける。

さらにシミーが別の目撃者を突き落とすところに出くわしたアーカーシュは、実は晴眼者ではと見抜かれ毒を盛られ、本当に視力を失う。署長にも殺されそうになるが脱出、協力者を求めて手探りで街をさまよっていると知人に助けられるが、彼らもまたカネに目がくらんだ臓器売買グループ。このあたり、アーカーシュにとって絶望的な状況の連続なのに危機感を煽る演出はまったくない。どこかコメディを見ているようなドタバタ調の映像は、まだまだ何か仕掛けがあるのではという期待が膨らむ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

アーカーシュは臓器売買グループをうまく言いくるめ、シミーを拉致させて署長から大金を巻き上げさせる。いまや3すくみの騙し合いとなるが、アーカーシュはあくまで気の小さい善人のまま。最後まで運任せで悪人たちの “自業自得” を待つ姿は、運命とは戦わずに逃げることに専念していれば、人生は自然と落ち着くべきところに落ち着くと達観しているようだった。

監督  シュリラーム・ラガバン
出演  アーユシュマーン・クラーナー/タブー/ラーディカー・アープテー
ナンバー  217
オススメ度  ★★★


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