こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

悲しみより、もっと悲しい物語

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一緒にいるととても楽しい。同じ思い出を共有すると充足感を覚える。お互いだけがたったひとりのかけがえのない人。でも長い間同棲しているのに、素直に胸の内を打ち明けられない。物語は、高校時代から付き合い始めたカップルが秘めた思いを遂げようとする姿を描く。彼女には幸せになってもらいたい。余命短い彼は残りの時間を彼女のために使おうとする。一方で、なかなか進展しない彼との仲にいら立ちを隠せない彼女は、ほかの男に乗り換えようとする。だが、ふたりの行動はみな、好きな人により良い人生を送ってもらいたい願いでもある。ふたりとも気づいているのに気づかないふりをする。忖度の上に忖度を重ね、本心は封印する。それが相手のためになっていると信じて。そんな、親友以上恋人未満のふたりの、不器用なまでのやさしさが切なくも悲しい。

父が病死し母に捨てられたKは天真爛漫な魅力を持つクリームに声を掛けられる。クリームもまた交通事故で家族を亡くし天涯孤独の身。ふたりは意気投合し、Kの部屋で暮らし始める。

同じ大学を卒業し音楽業界に就職したKとクリーム。10年も続いているのに、ハグとキスしかしていないとクリームは嘆く。自分が白血病で早死にすると告知されているKは、だからこそクリームには手を出さない。それどころか、彼女がパーティで歯科医のヤンと急接近すると、Kはヤンの恋人に別れてくれと直談判する。非常識なのはわかっている。自分たちの事情しか考えていないと言われても方がない。ヤンとの結婚を決意したクリームの花嫁衣裳選びに同行するKのやせ我慢は仕、いにしえのダンディズムを思い起こさせる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

クリームもまたKを愛する気持ちでは負けていない。Kがもうすぐ死ぬのは知っている。ならばKが思い残すことがないように振る舞うのが思いやりと確信している。あまりにもやさしいけれど、あまりにもややこしい。来世を信じるのはいいが、やはり好きだという感情はストレートに告げるべきだとこの作品は教えてくれる。

監督  ギャビン・リン
出演  リウ・イーハオ/アイビー・チェン/アニー・チェン/ブライアン・チャン/エマ・ウー/ダーチン
ナンバー  52
オススメ度  ★★★


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