こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

わたしはダフネ

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心に浮かんだことをそのまま口にしてしまう。相手への忖度はできない。感情を制御できず、時に周囲に当たり散らしてしまう。誰に対してもちょっと高飛車。でも、職場にもひとりで行けるし仕事も一人前にこなしている。物語は、ダウン症の娘と彼女の父のふたりきりの旅を追う。母が急死したのは自分のせいと自責の念を抑えきれず、つい父にあたってしまう。そんな娘を黙って見つめる父。彼女はもう30歳を超えているはず。父はまだ元気だがもう老人といってもいい外見。彼らはどんな人生を送ってきたのだろう。どんな思いを飲み込んできたのだろう。感傷的なシーンや事情を説明するシーンは一切ないが、彼女がどれだけ愛されまわりの人々に溶け込んでいるかは、現在を見ればわかる。障害があるからといってかわいそうなんかじゃない。そう思わせるほど彼女は生き生きとしていた。

両親と共にバカンスに出かけていたダフネは、母・マリアの突然の死に取り乱してしまう。父・ルイージはダフネと2人で暮らすうちに、少しずつ彼女が自立した一人前の女性だと気づいていく。

マリアとは常に行動を共にするほど仲が良かったのに、ルイージにはつらく当たるダフネ。息がタバコ臭いとスキンシップを拒絶し彼が自室に入ると怒り出す。きっとルイージは子育てをすべてマリアに押し付け商売に逃げていたのだろう。初めてダフネに1対1で向き合わなければならなくなるが、接し方がわからない。それでも店を休み、一緒に食事をとるように努力していくうちにダフネの気持ちも変わっていく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ダフネとルイージはマリアの墓参りに行く。道中、小さな宿に一泊するが、その晩ルイージは宿の女将に秘めてきた心情を吐露する。母親なら、己の腹から生まれてきた子供は障害があっても受け入れられる。だが、父親には不運としか思えずなかなか子供を愛する覚悟が生まれなかった。この父娘の間にあった距離は、そんなルイージの過去が原因なのだろう。その葛藤を乗り越えた父娘の笑顔はまぶしかった。

監督  フェデリコ・ボンディ
出演  カロリーナ・ラスパンティ/アントニオ・ピオバネリ/ステファニア・カッシーニ/アンジェラ・マグニ/ガブリエレ・スピネッリ/フランチェスカ・ラビ
ナンバー  49
オススメ度  ★★★


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