こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

暗数殺人

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巧妙に紡がれた嘘の中に知られていない事実が含まれている。そのにおいを直感的にかぎ分けた刑事は真実を求めるあまり泥沼に足を取られていく。物語は、殺人事件犯人が他の殺人を告白、刑事が再捜査のするうちに犯人に翻弄されていく姿を描く。7人殺したのは本当なのか。別の狙いがあって混乱させようとしているのではないか。刑事は供述の見返りにカネを渡し、犯人は情報を小出しにして刑事の関心を引こうとする。被害者はみな失踪扱いされている。殺人事件として立証するには状況証拠ばかりで物的証拠は乏しい。そして犯人は裁判では自供を翻し、無罪を主張する。知能が高く決断も早く体力にも恵まれているがおぞましい死臭を放っている、そんなサイコパス的犯人をチュ・ジフンが粘着質に演じていた。

麻薬取引摘発のためにテオに近づいたヒョンミンだったが、テオは別件で逮捕されてしまう。3ヶ月後、拘置所のテオから連絡を受けたヒョンミンは、彼が隠した証拠を見つけ、検察に大恥をかかせる。

あらかじめ仕込んでいたとは思えない。だが、テオならば公判で言い逃れできるような証拠隠滅工作ができる気もする。殺してはいない、死体を運んだだけと法廷では証言するテオの狡猾に仕組んだ罠にヒョンミンはがんじがらめになり、いつしか上司の命令を無視してまでテオの言葉を信じ強引な捜査を行う。独房で刑法関連の法律書を読み漁るテオの、国家の法体系に挑戦するかのごとき不敵な瞳が印象的だった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後、彼が自白した事件について起訴しては敗れ、警察で肩身の狭い思いをするヒョンミン。墓から掘り出した遺体からヒントを得て、今度こそはと意気込む。ところが、人を殺しても隠蔽し時間がたてば死体遺棄でしか刑事告訴できない。しかも時効の壁があり有罪に持っていくのは困難。そういったことを知り尽くしたうえで、テオはヒョンミンに接触してきたのか。実際に起きた事件に基づいているがゆえに、真相は藪の中的な消化不良感が、心に重くのしかかる作品だった。

監督  キム・テギュン
出演  キム・ユンソク/チュ・ジフン/チン・ソンギュ
ナンバー  72
オススメ度  ★★*


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