こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語

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強く願い努力すればきっと叶うと信じていた。仲良し姉妹はみな幸せになると疑わなかった。初恋の相手と結ばれる運命だと思っていたetc. 後になって振り返ってみると、ティーンエイジャーの幼稚な思い込みだとわかる。それでも目にするものすべてが新鮮だったあの頃の輝きは少しも色あせない。物語は19世紀後半の米国東部、中流家庭で育った四姉妹の愛と絆を描く。美貌だが実利的な長女、作家を夢見る次女、病弱で繊細な三女、画家志望の四女。それぞれ個性を際立たせながらも大人の階段を上ろうとする少女たちの溌溂とした日常が瑞々しい感性で活写される。なによりも、緑豊かで四季の移ろい鮮やかな土地と、そこで生きる人々の服装から小物・言葉遣いや習慣までディテール豊かに再現された映像は、美しさ以上の気品を湛えていた。

自作の原稿を雑誌編集部に売り込んで生計を立てているジョーは、妹・ベスの看病のために故郷に戻る。道中、脳裏によみがえるのは、母と四姉妹で過ごしたかけがえのない日々だった。

父は出征して不在、かつては裕福な家だったのに今は慎ましく暮らしている。まだ女性の権利が制限されていた時代、彼女たちにとって結婚はシビアな経済問題として語られる。甲斐性なしの家庭教師と結ばれた長女・メグは裕福だった過去を忘れられずにドレス用の生地を買ったりする。伯母の随伴でパリに行った四女・エイミーも画家の才能が不足していると知ると、幼馴染を受け入れてしまう。同時に、彼女たちの隣人が大富豪だったり掘っ立て小屋に住んでいたりと格差もすぐ目の前にある。カネが人生を左右する現実を背景にしているあたり、当時の生活感がリアルに感じられた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

末っ子のエイミーは事あるごとにジョーと自分を比較する。クリエイティブな職業に憧れる者同士、成功を目指してライバル心を燃やすだけでなく、隣家の御曹司・ローリーを巡っても微妙な三角関係になったりする。そんな苦悩や葛藤を通じて成長する姿を自らの小説に昇華させるジョーの作家魂がたくましい。

監督  グレタ・ガーウィグ
出演  シアーシャ・ローナン/エマ・ワトソン/フローレンス・ピュー/エリザ・スカンレン/ローラ・ダーン/ティモシー・シャラメ/メリル・ストリープ/ルイ・ガレル/クリス・クーパー
ナンバー  86
オススメ度  ★★★*


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