こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

私がモテてどうすんだ

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デブでメガネで学校の男子には興味がない。恋の相手は二次元のヒーロー、現実世界に背を向けてひたすらBL妄想にふけっている。物語は、そんな女子高生が激やせして美女に変身、突然モテ始めたのを機に起きる騒動を描く。男子とのデートは未体験。コクられた経験ももちろんない。言い寄ってくる男子はみなコミックに出てくる王子様に見え、彼ら同士が恋に落ちる展開を頭に浮かべて悦に入っている。だが本人の意思とは逆に、彼女の美貌を周囲は放っておかない。4人の長身イケメン男子に囲まれる幸せをかみしめようとはせず適度な距離を取りながらも、彼女が本当にやりたいことを見つけていく過程はコミカルで笑わせてくれる。さらに、主要登場人物が全員キレキレのダンスを披露し、ミュージカル的なノリもふんだんに楽しめる。

大ファンだったアニメキャラが死んだショックで1週間寝込んだ花依は、見違えるほどスリムになる。登校するとたちまち注目を浴び、早速4人のイケメンたちが接近してくる。

初めてのデートはアニオタの聖地、4対1の逆ハーレム状態ながら、オタクバレするのを恐れてなかなか本心を明かせない。その逡巡を、カメラを円回転させながらワンショットで撮影した映像は、ロケの制約もあって非常に緊張感を伴う一方、少し外したユーモアも忘れていない。デブに戻った花依を再びやせさせるための “ニンジン作戦” のご褒美がBLラブシーンの再現というのもユニークで、そのバカバカしさ加減が突き抜けている。リアルな恋愛など眼中になく、己の “萌え” の中で恋愛を完結させてしてしまう花依を肯定し、彼女を見守るスタンスも心地よい。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

演劇部からのヒロイン役オファーを受け稽古に励む花依だったが、その間またデブと美女を往復、一時は他人の期待に応えるために頑張ったりもするが、あやふやな態度が男子たちの心をもてあそんでいたと気づかされる。そしてやっぱり思いのままに生きるのが最善と知る。自分の人生の主役は自分しかいない、そう思わせてくれる作品だった。

監督  平沼紀久
出演  吉野北人/神尾楓珠/山口乃々華/富田望生/伊藤あさひ/奥野壮/上原実矩/坂口涼太郎
ナンバー  110
オススメ度  ★★★


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