米俵を小さな体に背負い、倉庫から浜まで運ぶ女たち。何度も往復し疲れ果てるほど働いても、米1日分の賃金しか得られない。なのに、彼女たちの苦労をよそに、米の値段はどんどん上がっていく。物語は、家事も子育てもしながら家計を支えてきた漁村の女たちの反乱を描く。読み書きができ論理的に考えることができるヒロインは行動力に欠け自信が持てない。リーダー格の老婆は肚が据わり気も強いがゆえに警察に狙われる。他の女たちは、生活苦は嫌だけれど自分の家族が食えているうちは穏便に済ませたい。そんな、 “個” としては弱い者たちが自らの意志を固め立ちあがる姿が凛凛しい。怒りを爆発させた女たちの突撃に男たちはおろおろするばかり、男女の立場が逆転した場面がコミカルかつ痛快だ。
夫が出稼ぎに出たまま戻らないいとは、近所の女房たちと共にシベリア出兵による米価格の高騰を嘆いていた。窮状を聞き付けた彼女たちのまとめ役・おばばに率いられて直談判に向かう。
勢いに任せて米屋に押し掛けようとしたものの、途中いとたちは不当逮捕された男の釈放を求めて警察署前で座り込むなど、組織としての統制はあまりとれていない。その後も、米屋によるいとたち不平派の切り崩しにあったりするなど、まだまだ怒りが沸点に達するところまではいっていない。このあたり、彼女たちは「失うものは何もない」というところまでは追い詰められてはいない。それでも、フェミニズムなどなかった時代に、漁村の女たちでも社会を動かせる力があると証明されたことは、男社会には大きな衝撃だったに違いない。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
いとたちが米の積み出しを阻止しようとして起きた騒ぎが、大阪で「女一揆」という暴動であると報道されると、新聞記者が派遣されてくる。取材データを本社に送ってもボツ、もっと煽情的な原稿をよこせと言われる。編集長が、より読者が喜ぶ記事を求めた結果、「コメ騒動」は全国に広がり、甲子園の前身大会が中止になったりする。民衆の不満が拡散する速さはSNSに匹敵するのだ。
監督 本木克英
出演 井上真央/三浦貴大/夏木マリ/立川志の輔/吹越満/鈴木砂羽/舞羽美海/左時枝/木下ほうか/吉本実憂/石橋蓮司/室井滋
ナンバー 7
オススメ度 ★★★
↓公式サイト↓
https://daikomesodo.com/