こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

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贅を尽くした食べものにありつけるのは最上位にいる一部の人間だけ。「上の下」にいれば、まだ残飯は手に入る。だが、中位以下はそれすらもなく、生きるためには誰かから奪わなければならない。物語は、数百層に垂直分割された空間に閉じ込められた人々の、食料を巡るサバイバルを描く。いつ自分が下層に落とされるかわからない。ならば、上層にいるうちに食べておきたい。より上層の人に公平な分配を訴えても誰も耳を貸さない。下層の人も生き残るのに精いっぱい。あらゆる階層で、エゴに塗れた人々は己の腹を満たすことだけを考えるようになっていく。その結果生まれる圧倒的な格差は、もはや個人の努力では解消できない。21世紀資本主義を象徴するようなシチュエーションは、奇妙な感覚的リアリティがあった。

48層で目覚めたゴレンは同室の老人・トリマシカからここでのルールを教わる。1カ月目はなんとかまともなものを口にできたが、次に目覚めた時は食べ残しすらない171層に落とされていた。

長くいるらしいトリマシカは先手を打ち、ゴレンを縛り上げた上鋭利なナイフでゴレンの足の肉を削ぎ、生のまま口にする。痛みに耐えきれず悲鳴を上げようとしても空しく響くのみ。下層では相手を食うための殺人が当たり前のように行われているようである。貧困層貧困層同士で少ないパイを奪い合うという実世界のパターンがここにもトレースされて、協力や連帯といったきれいごとが通じない人間の真実が赤裸々に暴かれる。“上にいる者、下にいる者、転落する者の3種類しかいない” という冒頭の言葉が忠実に反映されるのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

新たな同室者から影響を受けたゴレンは、かなりの上層に移った時、“必要に応じた分配” こそが最善の打開策と、実行に移す。頼むのでは効果はない、時に暴力を行使してゴレンは己の理想を実現していく。民主主義的な手段では実効性はない、強権でしか秩序は保てないとこの作品は訴える。中国式を肯定しているようで気分はよくないが、それもまた現実なのだ。

監督  ガルダー・ガステル=ウルティア
出演  イバン・マサゲ/アントニア・サン・フアン/ソリオン・エギレオル/エミリオ・ブアレ
ナンバー  20
オススメ度  ★★★


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