こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

X エックス

昔はつらつとして美しかった。輝く笑顔とダンスは男たちを魅了した。今ではすっかり白髪となり、肌もたるんでカサカサに乾いている。それでも、あふれんばかりのエネルギーを発散させる若者たちを見ていると、子宮の奥がうずいてくる。物語は、ポルノ映画製作のために老夫婦の農場を訪れた撮影隊が1人ずつ惨殺されていく過程を描く。都会から来た彼らに老人はあまり好印象を抱いていない。老婆は女優のひとりに運命的な直感を得る。田舎者を馬鹿にしたようなプロデューサーと芸術家気取りの監督、セックスを売り物にする男女俳優に真面目な録音技師。それぞれが、どこか異様な空気を感じながらも老夫婦から目を背けている。男の性欲は精力減退と共に衰えるが、女の欲情は年齢に関係ない。老婆のすさまじいまでの執念と若さへの嫉妬が人間の本質を露わにしていた。

人里離れた農場の小屋にやってきた6人はさっそくカメラを回し始める。監督のRJは恋人がセックスシーンを演じたことに腹を立て夜中に逃げようとするが、老婆が立ちはだかる。

老婆はすっかり気持ちが若返っている。鏡で老いの現実を直視しているはずなのに、化粧道具を取り出して自らにメークを施す。夫は彼女の期待に応えることはできない。RJを誘惑するが、当然RJは彼女を受け入れられない。性的に役に立たない男はもはや無用とばかりに、老婆はRJを始末する。その後も老婆は暴走、夫や他の撮影隊が姿を消した彼女を捜すうちに夜は更けていく。まだ通信環境が貧弱だった時代、孤立した環境でよそ者が行方不明になってもなかなか事件として露見しない恐ろしさが全編に漂っていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

撮影隊はひとりまたひとりと餌食になっていく。予想通りの最期を迎える者、意外とあっさり息絶える者、死に方は様々だが血の惨劇は一晩中続く。老婆の意味ありげな視線や不可解な言動が、撮影隊と老夫婦の邂逅が偶然ではなく運命だったと暗示するシーンが秀逸だった。この老夫婦と農場には、まだまだ秘められた謎がありそうだ。

監督     タイ・ウェスト
出演     ミア・ゴス/ジェナ・オルテガ/マーティン・ヘンダーソン/ブリタニー・スノウ/オーウェン・キャンベル/スティーブン・ユーア/スコット・メスカディ
ナンバー     129
オススメ度     ★★★


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