わずかな気配と音で相手の位置と動きを見切り武器を投げ銃を撃つ。盲目とは思えない察知能力と老人とは思えない強靭な肉体を持つ男は、今度は訓練を受けた悪党どもを迎え撃つ。物語は、町はずれの一軒家に少女と2人で暮らす老人の奮闘を描く。老人に育てられた少女は、厳しい訓練でサバイバル術を磨いている。凶悪な男たちを相手にしても怯まずに逃げ、時に反撃する精神力も持っている。それはすべて老人が教え込んだもの。だが、いくらタフに成長してもまだ子供、友達もおらず外出もままならない環境で息が詰まりそうになっている。そして巡ってきた外の世界に出るチャンス。自分はいったい誰なのか、なんのために生かされているのか、少女がアイデンティティに目覚めていく過程は、ねじくれた世界にいざなわれるようだった。
配達人と街に出た少女・フェニックスは怪しげな男に声を掛けられ、尾行される。家に戻ると武装した男たちが侵入し、老人が迎え撃つが、フェニックスは男たちに連れ去られてしまう。
まるで晴眼者のように障害物をよけて歩く老人。とはいえ、元軍人が相手となると、フェニックスを守るというハンディを背負い狩る立場からむしろかられる立場となる。時に逃げ、時に隠れ、勝手知った敷地内で抵抗を続ける。ナイフやハンマーからガスや電気火花まであらゆる小道具を武器にして立ち向かう姿はアイデアに満ちていた。特に瞬間接着剤の使い方は最高! もはやアクション映画に分類されるべきだが、カメラワークや音楽・効果音はあくまでホラータッチにこだわる。その配合は「?」だが、老人の頑強さだけは印象に残る。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
猛犬を助けたことから反撃に転じた老人はフェニックスが拉致されている廃ホテルに乗り込む。悪党のボスはフェニックスの実の父親で、老人は悪名高い元特殊部隊員と知らされたフェニックスはあまりの急転に戸惑い、さらに母親まで登場して事態は混とんとする。理解しがたい人間関係の中、悪党のひとりが良心に目覚めたのは救いだった。
監督 ロド・サヤゲス
出演 スティーブン・ラング/ブレンダン・セクストン3世/マデリン・グレース
ナンバー 147
オススメ度 ★★*