こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

鳩の撃退法

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事実なのか創作なのか、原稿用紙につづられた作家の文章は次々と現実になっていく。物語は、地方都市で見聞したことに想像力で肉付けし小説にまとめた男が、迫りくる恐怖と戦う姿を追う。主人公は作家自身、登場人物も場所もすべて実在する。執筆の過程で作家が頭の中で生み出した出来事は、図らずも未解決事件の真相をついている。このままでは次に消されるのは自分かもしれない。得体のしれない組織は暴力をいとわない大きな力を持っている。作家の考えたストーリー通りに小説の世界は動くのに、いつしか暴走し始める。すべてを操る力を持っているはずなのに、いつしかその力の奴隷になってしまっている。偶然それとも運命? そんな作家の苦悩とジレンマは、因果関係に支配された世の中など意外と狭く脆いと教えてくれる。

富山でデリヘルの運転手をしている津田は、深夜のカフェで秀吉に声をかける。その後、秀吉一家は失踪、津田はなじみの古本屋の遺品を受け取る。そのバッグには1万円札で3003万円が入っていた。

カネが偽札だったことから、倉田の組織が動き始める。カフェ、デリヘル、理髪店、チンピラetc. 複雑に絡み合った人間関係に翻弄されながら何とか生き延びるすべを模索する津田。素性がはっきりしている者はほとんどいない。だが、見えている事実と知りえた事実を元にキャラクターを創造していくと必然的に彼らの正体が見えてくる。嘘話を本当らしく語ることを生業にしている津田の鋭い洞察力と豊饒なイマジネーションが、虚実皮膜の感を行き来する感覚を味あわせてくれる。人と人は本人が知らないところで繋がっていたりする。それをうまく生かせるかどうかで、未来は好転する。いや、暗転するかもしれない。津田の行動は、人生とは本人のあずかり知らぬところで動いていると訴える。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、思わせぶりなショットの多用や、伏線回収のためのおさらい映像、さらに津田自身がネタバレ解説するなど、ミステリーの常識を超えた仕掛けの数々は、斬新さよりもこじつけ感を強く覚えた。

監督     タカハタ秀太
出演     藤原竜也/土屋太鳳/風間俊介/西野七瀬/岩松了/村上淳/坂井真紀/ミッキー・カーチス/リリー・フランキー/豊川悦司
ナンバー     155
オススメ度     ★★*


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