両親がいなくても大丈夫、友達がいっぱいいるから。陰険な里親に引き取られてもポジティブ、魔法を教えてもらえるから。物語は、孤児院に託された赤ちゃんがたくましい少女に成長していく姿を描く。強烈なリーダーシップと押しの強さで、院長先生も助手もコックも仲間の孤児たちも思い通りに動かす。好奇心旺盛で、考える前に行動してしまう。どんな逆境にもめげず、むしろそれをチャンスに変えてしまう。つらいこと、不愉快なことすら楽しんでしまうヒロインの生き方は、まるで世界には悪意を持つ人間などいないかのよう。シーツをかぶってのお化けごっこもしゃべる猫も壁の向こうの不思議な空間も動き出す前のタメも、この作品の対象となる小学校低学年のくらいの子供たちにはワクワクするギミックなのだろう。ただ、大人が見るには少なからず物足りなさを覚えた。
魔女の母に捨てられたアーヤは、孤児院一の活発な少女。ずっと孤児院で暮らしていきたいと思っていたが、ある日訪ねてきた怪しげな男女に気に入られ、魔法の家に引き取られていく。
太った女・ベラが欲しかったのは秘薬づくりの下働き。来る日も来る日も雑用ばかり言いつけられてうんざりしていたアーヤは、報酬として魔法を教えてくれと頼む。拒まれると、しゃべる猫・トーマスの協力を得て独学で秘薬づくりを始める。一方で、気難しい男・マンドレイクの懐に飛び込み、彼からやさしい一面を引き出していく。このあたり、天性のものとはいえアーヤの人たらしぶりはどんな大人もかなわない。自分の思い通りに事を進めたいのなら周囲の人々が喜んで協力してくれるような人間関係を構築すべしと、アーヤは身をもって証明する。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
いつの間にか魔法の家でも主導権を握ったアーヤ。ベラもマンドレイクも彼女の言いなり。少しは苦労もあった。思い通りにいかないときもあった。それでも、こんなに万事うまく運んでは共感が得られないだろう。人心を自在に操る能力を持つアーヤこそ、最強の魔女。本名に込められたのはそういう意味だったのか。。。