こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

禁じられた遊び

“エロイムエッサイム、エロイムエッサイム”。死体の一部があれば本体を再生できる。そう信じた男の子は交通事故死した母の小指を庭に埋め、奇妙な呪文を唱え始める。物語は、嫉妬深い妻の霊が夫に近づく女を呪い殺そうとする過程を描く。女は夫と少し親しくしただけなのに、妻はさまざまな嫌がらせをする。もはや誇大妄想ともいえる妻の被害者意識。だがそれは大きなエネルギーとなって、邪魔者たちに物理的作用を及ぼすばかりか彼らの精神まで乗っ取ろうとする。血色を失った鈍く白い肌、邪悪さが凝縮された黒い髪、憎悪に満ちた血走った目、そして心の傷が浮き出たような体表のひび。貞子を進化させたような悪霊の造形は、思い込みが激しい女の怨念の醜さと恐ろしさを具現化していた。情報提供の謝礼を暗に要求するシスターが俗っぽくてよい。

井原の妻子が交通事故に遭う。妻・美雪は即死するが、医師から死亡宣告を受けた息子・春翔は落雷で蘇生する。葬儀後、春翔は美雪の小指を自宅の庭に埋め、彼女の復活を願う。

以前井原の同僚だった比呂子は美雪のせいで映像カメラマンに転職していたが、美雪の焼香に訪れた際に井原と言葉を交わす。それ以降、比呂子の身辺で超常現象が相次ぐ。有名な霊能者を頼ると、それは生き霊が起こしているという。除霊を頼んでも彼らでは歯が立たないほど生き霊の念は強力で、彼らもあっさりと排除される。やがて土の中で小指から成長した美雪の肉体がもぞもぞと動き出す。それが大好きなママだと疑わず喜んでいる春翔の表情に、死の穢れを恐れない狂気がにじみ出ていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

なぜ美雪は恐ろしい能力を身に着けたのか? 比呂子はディレクターの柏原と共に美雪の過去を洗う。そこで知った衝撃の真実。恨み怒り憎しみで他人に害をなすのは死者の霊ではなく生き霊であるという「源氏物語六条御息所的解釈は、ホラーの新しい境地を開拓していた。美雪の恐ろしさを知る井原の歯切れの悪い態度がとてもリアルで、情の深い女と結婚した男の不幸が凝縮されていた。

監督     中田秀夫
出演     橋本環奈/重岡大毅/ファーストサマーウイカ/正垣湊都/ 堀田真由/倉悠貴/MEGUMI/清水ミチコ/長谷川忍/猪塚健太
ナンバー     168
オススメ度     ★★★


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