こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

truth -姦しき弔いの果て-

f:id:otello:20211210133732j:plain

3年間、毎週愛してくれた。温泉に連れて行ってくれた。記念写真も撮った。そこには “愛されているのは私だけ” というゆるぎない確信があった。物語は、事故死した男の部屋に集った3人の女の葛藤を描く。一人は子育てが終わったシングルマザー、一人は美貌の受付嬢、一人は高収入の女医。3人が3人とも自分こそが本命だったと主張し、互いに対してマウンティングする。話し合いは自慢合戦になり、さらに罵り合いから取っ組み合いに発展する。そしてたどり着いた和解と真実。だだっ広いワンルームマンションという設定の限られた空間内で繰り広げられる三人芝居は、まるで小劇場の一幕物のよう。テンポのいいセリフの応酬が終始途切れず3人のバランスも絶妙。話の先が見えない展開はコミカルかつスリリングだった。

ダーリンの葬儀の後、彼の部屋に居合わせたマユミ、マロン、サナ。彼女たちはみなダーリンとの思い出を大切にしていたが、それぞれデートする日は月・水・金曜日と決まっていた。

ダーリンは大金持ちの道楽家だった。絵画・写真・釣りなどの趣味で才能を発揮するが、プロになれるほどの腕前ではない。感性は繊細だが女たちに対して包容力があり、愛されている以上に彼女たちを愛していたことをうかがわせる。男心をくすぐるマユミ、情熱的なマロン、理知的なサナと、三者三様でそれぞれに美点を持っている。ダーリンはひとつのタイプに満足しない代わりに3人公平に扱った。3人が3人ともお互いの悪口は言い合っても、決してダーリンをディスったりしない。そのあたりにダーリンの人格が浮き彫りにされていく構成が洗練されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて、彼女たちの名前とダーリンの名前を漢字表記にしたとき、運命的な結びつきがあったと気づく3人。そして伝えられなかったメッセージに込められた、ダーリンが本当に残したかったものが明らかになる。3人の女が1人の男の遺伝子を欲しがるというフェミニストが難癖をつけそうな設定が、逆に女たちの本音を赤裸々にしていた。

監督     堤幸彦
出演     広山詞葉/福宮あやの/河野知美/佐藤二朗
ナンバー     189
オススメ度     ★★★


↓公式サイト↓
https://truth-film-japan.com/