仲のいい女友達の恋バナにひっかかりを感じた時、どう振舞えばいいのか。恋人の復讐に加担したけれど相手の方がよほど誠実と知ったとき、打ち明けるべきなのか。古い友人と思って声を掛けたのに名前を思い出せないといわれたとき、どんなリアクションをすべきか。物語は、思わぬ出来事に直面した人々の、何を考えどう行動すべきか思案を巡らせる姿を描く。真実にまだ気づいていない相手に黙っているのは嘘をついていることにならないか。だが、正直に告げても相手を傷つけるだけ。逡巡しながらも素早く計算し最善の答えを導き出さなければならない。ほとんど会話だけの映像は、想定外の事態に陥ったとき、慌てずに受け止めて対処し、むしろその変化を楽しんだ方がより新たな人間関係を構築し世界も広がっていくと教えてくれる。
つぐみの新恋人に心当たりがある芽衣子は、カズオのオフィスを訪ねる。教授にハニートラップを仕掛けようとする奈緒は、官能小説を朗読する。高校時代の同性恋人とすれ違った夏子は思わず声をかける。
第1話は芽衣子の性格がぶっ飛んでいてついていけなかった。第2話では、教授が常に研究室のドアを開放しアカハラを警戒している。奈緒は、性的な誘惑を露骨に繰り返しながら教授とのやり取りを録音しているが、教授は応じない。それどころか、エスカレートする性描写を声にしながらも、小説を通じて教授の人となりを知るうちに自分が浅はかな計画に乗ったことを後悔する。その過程で、奈緒の “女” としての部分が徐々に疼き始める。文章に奈緒の体が反応していくシーンは緊張感にあふれていた。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
第3話では、中年女がもう20年も会っていない女とエスカレーターですれ違う。振り返ると相手も驚いたように自分を見ている。都会ではよくある状況で早速お互い手を握り再会を喜ぶが、そのあとの展開がなんとも人を食った話になる。むしろまったく知らない人だからこそ今まで心に秘めていたことをすべて吐き出せる、そういう気楽な時間も時に必要だと痛感した。
監督 濱口竜介
出演 古川琴音/中島歩/玄理/渋川清彦/森郁月/甲斐翔真/占部房子/河井青葉
ナンバー 231
オススメ度 ★★★*