こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

グッバイ、ドン・グリーズ!

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無邪気にはしゃいでいた子供時代は終わった。でもまだ大人になるための覚悟はできていない。農村の町、そこから一歩踏み出せば世界は違って見えるかもしれない。物語は、失くしたものを見つけるために、いや、己に何が欠けているかを見つけるために冒険の旅に出る3人の少年を描く。きっかけは操縦不能になったドローン、それを回収しなければ大変なことになってしまう。道路は通行止め、道なき森を方角もわからず進む。乗り気じゃなかった。来たのを後悔した。だが、外国から来た少年の一言が、他の2人を勇気づける。自分が小さな人間だとわかっている。変わらなければとも思っている。途中で投げ出せば前に進めないのも知っている。大人は忘れてしまった、未知への期待と不安。そんな少年たちの繊細な表情がエモーショナルに再現されていた。

友人が少ないロウマとトトは、アイスランドから来たドロップとともに、町の外に出るトンネルをくぐる。しかし、道路は寸断されたまま、警察や消防との遭遇を避けるために山道に入る。

深い森の中、太陽は見えずスマホは圏外。先に歩くドロップとブー垂れるトトの間を取り持つように、ロウマは気を遣う。道に迷ったときに思わずトトが口にする言葉が鮮烈だ。都会に行って洗練された者と地元に残って代り映えのしない者。ついこの春までは同じ中学生だったのに、夏休みまでの短い間でついてしまった格差。友達のままでいたいからこそ、気づいているのに気づかないふりを続けるロウマとトトの関係が切なかった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてドロップの運命が徐々に明らかになっていくと、ロウマとトトはこのかけがえのない時間を宝物のように思い始める。たった2日間一緒に過ごしただけだけれど、その思い出は永遠に胸に刻まれている。未来はいくらでもあるのに、ドロップにはない。青春と友情がすべてだと信じたい。ドロップが語った黄金の滝を探して、再び旅に出るロウマとトトの、少し成長した背中が大きく見えた。ただ、チボリとの絡みがもう少し欲しかったが。

監督     いしづかあつこ
出演     花江夏樹/梶裕貴/村瀬歩/花澤香菜/田村淳/指原莉乃
ナンバー     35
オススメ度     ★★*


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