こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

パリ13区

募集したルームメイトは同性だったのに、やってきたのは黒人の男。だが、知的で精力的な彼に魅力を感じた女は同居を許してしまう。物語は、パリ南部の住宅街で暮らす中国系女と黒人男、さらに32歳の女子大生の日常を描く。フィーリングが合えばすぐにセックスはするが、なかなかそれ以上の関係にはなれない。一緒にいる時間は楽しいけれど、四六時中拘束されると気が重くなる。自分を犠牲にしてまで付き合っていたいとは思わない。そこにあるのは刹那的な快楽のみ。誰もが心に浮かんだことを忖度なしに口にして相手を傷つける。でも相手の本音を知ったからこそ自分の本心とも向き合える。ふた言目にはギスギスとした空気になってしまう彼らの会話、外国出身者が住む多民族地域ではきちんと自己主張しなければ認めてもらえないのだ。

エミリーは、新しくルームメイトになったカミーユとほどなくセックスする仲になる。だが、カミーユが黒人ガールフレンドを部屋に連れ込んだことから、エイミーはカミーユを追い出す。

典型的な “フランス人” の血を引いていない2人。それでもきちんと社会に溶け込み、犯罪には手を染めず福祉に頼っているわけでもない。裕福ではないが貧困層とは違う。そんな彼らの人生に立ちはだかるのはマイノリティの苦難ではなく、愛の不毛。エミリーはカミーユを本気で好きになり始めているのに、カミーユにとってはセフレの1人でしかない。好きなのに素直になれず、限度を超えると自分の気持ちを押し付けてしまう。恋の駆け引きの先にセックスがあるのではなく、セックスから始まった関係のややこしさが、21世紀的な人間関係を象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ポルノサイトの出演者と間違われて大学を中退したノラは、カミーユが働く不動産屋を手伝うようになる。カミーユはノラともセックスするのだが、やはり深く理解し合えるまでには至らない。アジア系アフリカ系欧州系と、3人の女を短期間に次々と落とすカミーユ、体格のいい黒人男はそれだけで強烈な性的アピールがあるということか?

監督     ジャック・オーディアール
出演     ルーシー・チャン/マキタ・サンバ/ノエミ・メルラン/ジェニー・ベス/カミーユ・レオン=フュシアン/ポル・ホワイト
ナンバー     75
オススメ度     ★★*


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