こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

Mr.ノーバディ

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ごみ捨て、通勤、ジョギング、オフィス……。毎日判で押したような平凡で退屈な日々、妻には冷たくされ息子にも見下され、懐いてくれるのは幼い娘だけ。物語は、そんな男の家庭に押し込み強盗が入ったのを機に起きる壮絶なバトルを描く。チンピラの横暴に抑制してきた暴力衝動にスイッチが入る。やはり動きが鈍っていたのか、5人をぶちのめすのに結構手間取っている。ところが、一度勘を取り戻すと、もはや暴走はだれにも止められない。引き金を引けば百発百中、武装したギャングたちはあっさり血祭りにあげられ、残ったのは死体の山。相手が犯罪組織の構成員とはいえ、殺して殺して殺しまくるシーンが連続する映像はかえって清々しかった。死への恐怖も不安も一切見せない究極のクールさを持つヒーローの活躍に思わず快哉を叫んだ。

押し込み強盗を穏やかに退散させたハッチは、戦わなかったことで妻と息子に失望される。だが、娘のブレスレットを取り戻すため、殺人マシーンとして恐れられていた過去の封印を解く。

ハッチの手首のタトゥーを見た強面の男が180度態度を変える。ハッチが有能な特殊戦闘員だったと気付かせる気の利いたショットだった。帰りのバスで5人組に絡まれた女を助ける決意をしたハッチは、あえて銃を捨て彼らに素手勝負を挑む。狭い車中での立ち回りは、急所を一発で突くような洗練された格闘術とは程遠く、まるで素人のケンカ。殴られ蹴られ投げられナイフで刺されたりもする。それでもハッチはひるまずひとりずつ片づけていく。彼の奮闘は、アドレナリン全開状態の人間は痛みを感じないと示していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

5人組がロシアマフィアだったことから、ハッチは家族と食事中に彼らの襲撃を受ける。もはや我慢することはない、心のリミッターを切ったハッチは自ら築いた要塞に敵を誘い込み、本能のおもむくままにロシア人に銃弾をブチこんでいく。まさに血しぶきと硝煙の壮大な見世物、「悪党にも事情がある」的な要素を排除しコンパクトかつテンポよくまとめられていた。

監督  イリヤ・ナイシュラー
出演  ボブ・オデンカーク/コニー・ニールセン/RZA/アレクセイ・セレブリャコフ/クリストファー・ロイド/マイケル・アイアンサイド
ナンバー  107
オススメ度  ★★★*


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