1年で一番忙しい夜なのに、よりによって寝不足で体調が悪く別居中の子供にも連絡しなければならない。食材の発注を忘れていたことにも気づいた。厨房では検査官が抜き打ち調査している。物語は、有名レストランのシェフが、さまざまなトラブルに直面しながらも解決に向けて奔走する姿を追う。遅刻する。さぼる。おしゃべりに興じる。ドラッグを吸う。手を洗う場所を間違える。イヤホンしたまま調理する。衛生面に気を使わない。袖をまくらない。ホール係との連携もできていない。挙句の果てにはキッチンで口論を始める。プロとしての意識が非常に低い従業員たちに囲まれて、開店前からシェフは爆発寸前。同時にいくつものもタスクを処理しながらも料理と接客もする主人公の、徐々に高まるフラストレーションがエモーショナルに再現されていた。
厨房の責任者・アンディはコックやパティシエ、見習いや洗い場、仕入れまであらゆることに目配りをしなければならない。だが、アンディ自身、私生活に問題を抱えていた。
すれ違うのがやっとの狭い通路をかき分けるようにして動き回るアンディ。部下たちは持ち場を離れず、分業化された自分の仕事に集中していて、他の担当が困っていても手を貸そうとはしない。ホールの責任者でもある女支配人もわがまま客や女コックの文句に手を焼いている。一応、グルメ評論家も訪れるほどのレストランなのに、責任感を持って仕事に取り組むのは管理する立場の人間だけ。満席で目が回るほど忙しいはずなのに機能的に回転しないレストランに違和感を覚えた。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
全編ワンショットというチャレンジングな映像は、間延びしないように次から次へと事件が起きる。入念なリハーサルが繰り返され何度も撮り直したのだろう。そこにかけた労力は確かに熱量が高い。だが、現実には5~6時間の間に起こるような出来事を90分に凝縮しているせいで、その目まぐるしさはむしろリアリティを欠く結果になってしまった。そもそもアンディがもっとしっかりしないとなぁ。
監督 フィリップ・バランティーニ
出演 スティーブン・グレアム/ジェイソン・フレミング レイ・パンサキ/ハンナ・ウォルターズ
ナンバー 130
オススメ度 ★★