数百メートルの距離を全力疾走する。防御盾を軽々と飛び越える。敵陣真っただ中に着地すると、周囲の兵をぶった斬る。呼吸は乱れず疲労も見せない。まさに猪突猛進、ただ大声を張り上げて突進する青年の超人的な身体能力とスタミナには驚かされるばかり。無理無謀ではあるが命を粗末にしているわけでもない。自分は絶対に死なないという確信のもと、決して足を止めない彼の姿はむしろ神々しくさえあった。物語は、戦乱続く古代中国で、大国同士の雌雄を決する合戦を描く。揃いの剣と盾と防具を与えられた敵は統率が取れた精鋭。味方は軍装も実戦経験も乏しい寄せ集め。圧倒的な戦力差を自覚しながらも気合と根性だけで突撃を繰り返す主人公は、20世紀のスポ根コミックを彷彿させる。いまだに精神論だけで勝利を呼び込めると信じていることに驚いた。
魏の大軍を迎え撃つために秦軍に参加したシンは、ポンコツ5人隊にスカウトされる。常に5人で行動する規則にもかかわらず、シンは単独行動で統率を乱す。
平原を埋め尽くす兵力で侵攻してきた魏軍は、見晴らしの良い2つの丘も手中に収めている。シンは司令官の命令などに耳を貸さず、ひたすら目の前の敵を蹴散らす。戦術も戦略もない。だが、敗色濃厚だった秦軍も、シンの八面六臂の活躍に士気が高まってくる。一方で、シンの小隊にいる女戦士・キョウカイはトルネードのように舞う剣術を使って敵を斬りまくるが、数分で息切れする。暗殺者として鍛え抜かれたキョウカイですら肩で息をしているのに、シンは最後まで元気いっぱいに戦場を駆け回る。その光景は特殊能力を得たアメコミヒーローのようだった。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
もっとアイデアあふれる新兵器にも期待したが、登場したのは戦車のみ。しかしその戦闘能力が発揮されたとは言えず、結局土埃に視界を遮られたなかで自滅する始末。この時代の戦争はこんなものだったのかもしれないが。まあツッコミどころも多かったが、まったくテンションが落ちないエネルギッシュな映像には退屈しなかった。
監督 佐藤信介
出演 山崎賢人/吉沢亮/橋本環奈/清野菜名/満島真之介/岡山天音/濱津隆之/豊川悦司/高嶋政宏/渋川清彦/玉木宏/小澤征悦/大沢たかお
ナンバー 132
オススメ度 ★★*