こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

マイ・ブロークン・マリコ

ダチが転落死したのをニュースで知った。すぐにLINEしても既読はつかない。部屋はすでに片づけられ葬式も挙げてもらえなかったという。彼女の実家に行くと遺影が寂しそうに笑っていた。物語は、不幸な少女時代を共有した親友の死をひとりで悼もうとする女の旅を描く。実父から暴行を受けいつも顔にあざを作っていた中学時代。手首の傷跡が生々しかった高校時代。卒業後もDVダメ男とばかり付き合っている。そんな彼女のそばにいながら助けてやることもできず、ただただ感情を爆発させることしか知らないヒロインは、旅先で出会った男のやさしさに少しずつ心の平静を取り戻していく。いくら悔やんでも彼女は帰ってこない。もう二度と会えない者への気持ちを、哀切を帯びた映像がリアルに再現していた。

火葬されたマリコの実家に押しかけたシイノは、暴力父から遺骨を強奪する。海に行きたいと言っていたマリコの夢をかなえるために、シイノは夜行バスに乗って北に向かう。

徒然に脳裏に浮かんでくるのはマリコと過ごした日々。いつも傷ついていたマリコは、ずっとシイノと一緒に暮らしたいという。他に友達がいないシイノもその気持ちがうれしい。だが、男依存症のマリコはボーイフレンドができるとすぐにシイノとの約束を後回しにする癖もある。いつも誰かに頼っていて、自分の遺志で行動しようとはせず、思い通りにならないと自殺をほのめかす。自己評価が低く向上心もなく運命に抵抗する意思もない、ひたすら我慢して一日が過ぎていくのを待つ弱い女を、奈緒が繊細に演じていた。ただ、記憶の断片ではなく、ひとつくらいはきちんとした思い出がほしかった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

さらに電車と路線バスを乗り継ぎ海の近くまで来たシイノは、ひったくりに遭ったところをユキオという男に助けられる。その後もなぜかタイミングよくシイノの前にユキオは現れる。押しつけがましくならないように声をかけシイノが必要としているものをそっと差し出すユキオの心遣いは、21世紀のダンディズムを象徴していた。

監督     タナダユキ
出演     永野芽郁/奈緒/窪田正孝/尾美としのり/吉田羊
ナンバー     186
オススメ度     ★★*


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