こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ソングバード

感染者は収容所に集められ死を待つばかり。非感染者は自宅から一歩も出られない。通りからは人影が消え、経済活動が停止した街は荒廃しきっている。物語は、ウイルス汚染された都市でも自由に動ける免疫者の恋を描く。動くものは何もない道路、障害物を避けながら全力でペダルを踏む。預かった荷物を届けた先では直接手渡せず、紫外線消毒しなければならない。会話はインターフォンかアプリだけ。そんな関係でも、彼はいつしかドアの向こうの彼女がかけがえのない存在に思えてくる。ハンディカメラのブレと短いショットの連続は登場人物の心の揺れを、せわしない音楽は不安とスピード感を表現しようとするが、出来上がった映像はデジタルっぽさばかりが前面にしゃしゃり出る安っぽいチャレンジに終始していた。

ウイルス抗体を持つニコは恋人・サラのためにパスと呼ばれる免疫証明のブレスレットを入手しようとする。密売人に連絡すると、取引場所には公衆衛生局の局長・エメットが待っていた。

建物の外に出ているのはパスを手首に巻いた者と防護服に身を固めた警備員のみ。警備員たちは武装していてニコに対して高圧的な態度で銃口を向ける。人々は毎朝定時に検温し衛生局のチェックを受け、発症者は容赦なく隔離ゾーンに連行される。徹底した都市封鎖とはこんな感じなのか。武漢などのロックダウンされた中国の都市では人々の暮らしや人権よりもウイルス根絶が優先され、きっとこの作品の登場人物のような生活を強いられていたに違いない。それでも偽造パスを売ったり愛人と密会したりするなど、抜け道を探す抜け目のない人間がいることに少しほっとした。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

サラは発症者との濃厚接触を疑われ拘束される。その間、ニコはサラのパスを手に入れるために町中を走り回る。時間との闘い、だがギリギリの緊張感もイマイチ盛り上がりに欠けた。ドローンを使って狙撃するシーンは、民間人がこんなものを持ち始めたらさらに銃乱射による死傷者が増える気がした。武装ドローンの所持は禁止すべきだろう。

監督     アダム・メイソン
出演     K・J・アパ/ソフィア・カーソン/クレイグ・ロビンソン/ ブラッドリー・ウィットフォード/ピーター・ストーメア/アレクサンドラ・ダダリオ/デミ・ムーア
ナンバー     192
オススメ度     ★★


↓公式サイト↓
https://songbird-movie.jp/