こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

オオカミ狩り

突き刺し、切り裂き、ぶっ放し、噛みちぎり、踏みつぶし、抉り取る。噴水のごとき血しぶきと無残に損壊された死体の山は、ある種「暴力と死の美学」の域にまで昇華されていた。物語は、海外逃亡犯ばかりを集めた囚人護送船で起きるハイジャック事件を描く。運ばれるのは複数殺人犯ばかり、手錠をはめられ鎖につながれても不敵な笑みを絶やさない者もいる。警備にあたる刑事たちはプロフェッショナルだが、退屈な船旅に気持ちが緩んでいる。警備隊に紛れ込んだ囚人の仲間たちは重武装し、躊躇なく引き金を引く。周囲は外海、迷路のような配置のブリッジ・廊下・階段・甲板を立体的に使った殺戮のパジェントは、エグさは強めだがグロさは控えめという絶妙の塩梅で、スクリーンから目を逸らすことなく映像を楽しめる。

ジョンドゥら凶悪犯を乗せた貨物船で反乱がおきる。自動小銃武装した囚人グループは次々に刑事と乗組員を射殺、指令室を占拠したうえで通信機器も破壊し、貨物船を孤立させる。

一方で、船底に設えられたラボでは密かに運び込まれた怪人が目を覚まし、感知する範囲内にいる人間は囚人・刑事・乗組員を問わず片端から素手で殺し始める。怪人はナイフを突き刺しても痛みを感じず銃弾をぶち込んでもひるまない頑強な肉体を持ち、超人的なパワーで頭蓋を砕き四肢をもぎ取り肉体を蹂躙していく。ジョンドゥとその仲間たちのたちのように殺人を楽しむのではない。ただ “殺す” という本能のみに従って行動する姿は、人間の傲慢さに下された神の鉄槌のようだった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

囚人・警備隊の銃撃戦現場に現れた怪人はどちらの味方もしない。ジョンドゥは怪人に挑むが、特別犯のドイルは怪人との接触を避け怪人もドイルには手を出さない。さらに怪人の身柄を狙う救助チーム長なども参戦して、もはやバトルロワイヤルのような様相となり、貨物船内の人間はすべて命を落とす。生き残ったのは超人加工された者ばかり、「キャプテン・アメリカ」もひとつ間違えればこんな運命だったのかもしれない。

監督     キム・ホンソン
出演     ソ・イングク/チャン・ドンユン/ソン・ドンイル/パク・ホサン/チョン・ソミン/チェ・ミョンジュ/チェ・グィファ
ナンバー     85
オススメ度     ★★★*


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