こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

耳をすませば

将来の夢を語り合ったあの日から10年。彼は着実にキャリアを積んでいるのに、自分はまだ覚悟のないまま漫然と忙しい日々を過ごしている。物語は、中学時代の恋人と遠距離恋愛を続けながら自らの進むべき道を模索する女の成長を描く。作家になりたいと新人賞に応募しているのに、まったく結果は出ない。文学の世界に身を置こうと文芸誌の編集者になったのに、正直な感想を飲み込んでしまう。中途半端なのはわかっている、そんな自分に腹も立つ。それでも彼と一緒に過ごしたきらめく日々の記憶は色あせず、思い出はいつも慰めてくれる。そして、新たな一歩を踏み出すにはまず行動を起こさなければと、彼女は厳しい上司に有給休暇を申請する。恋人の部屋の壁に貼られた「エーゲ海の天使」のポスターが懐かしい。

図書館で借りた本の貸し出しカードで聖司の名を知った雫は、彼と言葉を交わすようになる。聖司はチェロ奏者を目指して卒業後にイタリア留学すると語り、雫も小説を書く決心をする。

児童文学作家の担当編集となった雫は、編集長に怒鳴られるのが怖くて意見が言えない。なかなか構想がまとまらず小説もスランプから抜け出せないまま、聖司に会いたい気持ちをずっと我慢している。インスピレーションを求めて猫人形を拝みに行っても直感は降りてこない。答えは己の心にある。そう骨董屋の主から教えられた雫がはるばる聖司を訪ねるシーンは、まだ通信費が高額でSNSもなかった時代の恋人たちが、いかに直に会うことを重視していたかを思い出させてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、中学時代の雫を演じた安原琉那の感情表現やリアクションが、いちいちEテレの子供向けドラマ用の大袈裟な演技で腰が引ける。まだ恋の意味も知らない少女の繊細な心の動きを再現してくれたらもっと引き締まった印象になったはずだ。今はもう親世代になってしまったアニメ版のファンではなく、2022年現在の中学生向けに新たに作り直すのならば、細かい設定もアップデートした方が共感を得られると思うのだが。。。

監督     平川雄一
出演     清野菜名/松坂桃李/山田裕貴/内田理央/安原琉那/中川翼/田中圭/近藤正臣
ナンバー     194
オススメ度     ★★


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