こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

そばかす

合コンに行っても全然楽しくない。男女の機微がわからない。いつの間にか相手を傷つけている。放っといて欲しいのに勝手に心配してくる周りが鬱陶しくて仕方ない。物語は、そんな恋愛不感症の女のややこしい日常を描く。もう30歳になった。でも結婚には一切興味が湧かない。ひとりでいるのが苦痛ではないのに、古臭い価値観を家族は押し付けてくる。誰にも迷惑をかけないように努めてきたつもりなのに、いつしか悪者にされている。わかってくれとは言わないが、せめて干渉しないでほしい。立ち向かうよりも走って逃げるトム・クルーズの方がいいという彼女の好みには、誰にも理解されないマイノリティの生きづらさが凝縮されていた。貧困もセクハラもないけれど、些細な違和感が積み重なる。自分らしく生きるってやっぱり難しいとヒロインは訴える。

母の仕組んだ見合いでラーメン店主と仲良くなった佳純は、デート中にキスされそうになり拒否する。その後、中学のクラスメート・真帆に声をかけられ、キャンプに繰り出す。

元人気AV女優の真帆は政治家の父と絶縁中で、カネも時間もあるのかモラトリアムを謳歌している。幼稚園に転職した佳純も実家暮らしゆえに経済的には困っていない。人生にこれと言ってやりたい目標はないけれど、結婚して家庭に収まるのは向いていないと思っている。自由な真帆とは気が合い、世間の常識から外れてしまった者同士で「シンデレラ」に疑問を抱く。そのあたり、強烈な意志を持って自己主張するほどでもないけれど、なんとなく慣習に従う人生は嫌という、頑張ったり我慢したりせずぬるま湯のような現状に浸っていたい彼女の心情がリアルに再現されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

真帆との友情も途切れ、佳純は退屈な日常に戻っていく。だがそこで出会った青年は佳純の「シンデレラ」を知っていて、佳純は少しだけいい気分になる。でも彼女は変わらないだろう。進歩しなくてもいい、成長しなくてもいい。心地よく毎日を過ごせればいいという佳純の発想は21世紀の日本を象徴していた。

監督     玉田真也
出演     三浦透子/前田敦子/伊藤万理華/伊島空木/前原滉/ 北村匠海/田島令子/坂井真紀/三宅弘城
ナンバー     234
オススメ度     ★★★*


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