こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

トゥモロー・モーニング

運命の出会いだと思っていたのに。永遠に愛は続くと信じていたのに。時は夫婦の関係を確実にむしばんでいく。別居しても何も変わらない。子供を心配するあまり、顔を合わせれば言葉尻をとらえるような口論が絶えない。物語は、別れを決意した夫婦がまだお互いに希望と理想を抱いていた10年前を回想する過程を追う。もう明日には離婚届にサインするというのに気持ちは落ち着かない。彼らの板挟みになった息子は必至で抵抗を試みる。配偶者とはうまくいかなかったが、息子との絆は失いたくない。夫婦間の問題を洗い出していくうちに、ちょっとしたボタンの掛け違いが大きな齟齬になっていたと気づく。今ならやり直せるんじゃないか。まだ間に合うんじゃないか。そんな葛藤を抱える彼らが、嫌いになった相手との美しい思い出を反芻する姿が切ない。

パーティで知り合ったウィルとキャサリンはすっかり意気投合、ほどなく恋に落ちる。その後、ウィルは作家の夢をあきらめコピーライターに、キャサリンはアーティストとして成功する。

それなりの広告をまかされていて会社でも地位の高いウィルだが、キャサリンのほうが収入は多そうだ。夫婦間格差というほどでもないが、ウィルは肩身が狭い。キャサリンにはそれが男のつまらないプライドにしか見えない。やがて家庭内の主導権を握るために相手の粗探しをするようになり、もう耐えられなくなったのだろう。そして相手には何も期待しなくなる。信頼が失われていく経過は省略されているが、年々胸の奥にたまっていく不満の澱が限界に達する過程は容易に想像がつく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、せっかくのミュージカル仕立てなのに、状況を説明するような歌が多くてうんざりする。現在のパートなら、結婚生活の失望感ややらなかったことへの後悔、息子への思い。過去のパートなら愛し合う喜びやバラ色の未来。そういった喜怒哀楽を歌に乗せ全身で表現するのがミュージカルのだいご味ではないのだろうか。新しい試みなのかもしれないが、そのノリにはついていけなかった。

監督     ニック・ウィンストン
出演     ラミン・カリムルー/サマンサ・バークス/フラー・イースト/ジョージ・マグワイア/オリバー・クレイトンザックオリバー・クレイトン
ナンバー     235
オススメ度     ★★


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