こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アントマン&ワスプ クアントマニア

もはや倒すべきヴィランがいなくなった日常、かつて宇宙を救ったヒーローも普通の男として暮らしている。だが、祖母の好奇心を受け継いだ彼の娘は考える前に行動を起こし、思わぬ災厄を引き起こす。物語は、量子世界を通じて異次元空間に迷いこんだヒーロー一家の冒険を描く。この世界にも、姿こそバラエティに富んでいるが高度な理性を持った人々がいる。自由を抑圧し意のままに支配しようとする暴君とそれに抵抗する組織がある。内乱に巻き込まれた彼らは勇気と家族の結束で対処しようとするが、時空を操る能力を持つ強大な敵にはかなわない。それでもあきらめずに打開策を模索する過程は、自分勝手に振る舞っていた無数の主人公が団結するシーンに象徴され、未来はあらゆる可能性の中から最善の選択をした者に訪れると教えてくれる。

娘のキャシーを追って並行宇宙に飛び込んだスコットは反乱軍に遭遇、彼らが征服者・カーンの圧政と闘っていると知らされる。同時に時空移動してきた妻と義両親を捜し始める。

義母・ジャネットはかつてこの世界の住人でカーンとは浅からぬ因縁がある。カーンは基本時空から追放された極悪人、ここから解き放たれるとすべてのバースに災厄がもたらされるという。彼の本性を知ったジャネットこそカーンにとっての最大の仇敵。あらゆる場面で雑多な登場人物がわさわさと騒がしい落ち着きのない展開は、あまりにも膨大な情報量に感覚も感情も追いつかなかった。観客を思考停止に追い込むのが目的ならば見事に成功しているが。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

映画は量子論からマルチバース、時空の歪みなど、最新の宇宙物理学の要素が整理されることなく詰め込まれ、理論的には混とんとした状態。もはや何が善で何が悪なのかという疑問に意味はない。もちろん米国人が主人公なので自由と民主主義が正義であるのは変わらないが、全能の独裁者に指導してもらった方がより幸福という考え方も芽生えそう。価値観が多様化した現代だからこそわかりやすいヒーローの登場が望まれているのだが。。。

監督     ペイトン・リード
出演     ポール・ラッド/エバンジェリン・リリー/ジョナサン・メジャース/ミシェル・ファイファー/マイケル・ダグラス/キャスリン・ニュートン/ビル・マーレイ
ナンバー     30
オススメ度     ★★*


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