こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

湯道

人々が一日の疲れを癒す憩いの空間を提供するために、薪を割り湯を沸かしタイルを磨き脱衣所を片付け釣銭用の小銭を用意する。物語は、小さな町で銭湯を営む兄弟の葛藤と苦闘を描く。時代遅れなのはわかっている。もう何年も儲けは出ていない。マンションに建て替えたほうが利益は上がる。合理的な考え方をする兄は近代化を望むが、頑固な弟は通ってくれるお客さんのために昔ながらのやり方で営業を続けようとする。いまやどこの家庭にも内風呂がある時代、入浴の意義は多様化し、入浴という行為に求められる価値観も人それぞれ。温泉旅館で日ごろのストレスを忘れるもよし、手ごろな料金の銭湯でくつろぐもよし、マナーを極め悟りの境地を目指すもよし。映画は、その選択肢を通じて豊かな人生とは何かを問う。

都会での仕事に行き詰った史郎は実家の銭湯に戻るが、家業を継いだ弟・悟郎とはいがみ合っている。住み込み従業員・いずみが取りなそうとするが、悟郎は大けがをして入院してしまう。

定年間近の郵便局員・横山は檜風呂へのあこがれが高じて、湯道という入浴作法を極めるカルト的集会に参加している。そこでは様式が重んじられ衣類の脱ぎ方置き方にまでこだわりがある。むしろ緊張感にあふれ心に余裕など生まれない。ところが家元はそんな弟子たちの気持ちを見透かすように下手なダジャレを連発する。また、源泉かけ流し主義者の評論家は狭量な見識で銭湯を見下している。このあたり、入浴でリラックスできないという矛盾をもっと笑い飛ばすくらいの誇張があってもよかったのではないだろうか。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

悟郎たちの銭湯は古い構造で男湯脱衣所から番台越しに女湯脱衣所が見える。しかも、女湯の引き戸は開けっ放しで、外からでも見えてしまう。まあ、江戸時代までは混浴だったのだから、男女が裸を見せ合うことに対する抵抗感は、現代のほうが異常なのだろう。その昔、「時間ですよ」というTVドラマで夜ごと女湯脱衣所を除くオッサンがいたのを思い出した。今やると逮捕されるだろうな。。。

監督     鈴木雅之
出演     生田斗真/濱田岳/橋本環奈/小日向文世/天童よしみ/戸田恵子/寺島進/笹野高史/吉行和子/ウエンツ瑛士/吉田鋼太郎/窪田正孝/夏木マリ/角野卓造/柄本明
ナンバー     39
オススメ度     ★★*


↓公式サイト↓
https://yudo-movie.jp/