こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

エッフェル塔 創造者の愛

敗戦の痛みからまだ立ち直れていない国民を奮い立たせるのは、インフラよりもシンボル。物語は、空前絶後の高さと威容を誇る鉄塔を設計し建設の指揮を執った技師の奮闘と秘められた愛を描く。自分を捨てた恋人が有力者の妻となって現れた。抑えていた感情のほとばしりを止められなくなった彼は、事業に打ち込むほどに彼女にものめりこんでいく。建設資金が尽きかけ工事の中断が見え始めると、彼女との密会も加速する。彼女も、何か言いたそうに思わせぶりな表情を崩さない。コンペから資金集め、新工法から労働者の説得、不倫。すべてをひとりでこなそうとする主人公のエネルギッシュな行動力は、リーダーたる者の資質とは何かを教えてくれる。土台部分の接合時の角度調整に砂袋を使うアイデアには思わず膝を打った。

パーティでアドリエンヌと再会したギュスターブは、若き日の恋を思い出す。駆け出し技師だったころのギュスターブは資本家の娘だったアドリエンヌと結婚の約束をしていた。

人命救助だけでなく労働者の安全も優先させようと談判にくるギュスターブの男気にアドリエンヌは惹かれる。身分違いと分かっていながらギュスターブも受け入れてしまう。なによりも人生が輝いていた若き日々、その当時もギュスターブは恋にも橋造りにも夢中で全身全霊で生きている。まだまだ男が働き女は夫の付属物とみなされていた時代でも、やっぱり男の仕事に対するモチベーションはカネや名誉などではなく女で上がるのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

度重なる資金ショートの危機を乗り越えて、ギュスターブは鉄塔の完成を急ぐ。その間、アドリエンヌとの距離はなかなか縮まらないばかりか、彼女の夫にばれてしまう。夫を愛していないわけではない。でもギュスターブへの恋慕は断ち切れない。2人の男の間で揺れ動くアドリエンヌ。女が自立して生きることが難しかった19世紀末、彼女の選択が哀しかった。完成したエッフェル塔の土台から先端への曲線はアドリエンヌへの想いを昇華させたフォルム、その美しさは今も変わらない。

監督     マルタン・ブルブロン
出演     ロマン・デュリス/エマ・マッキー/ピエール・ドゥラドンシャン/アルマンド・ブーランジェ/アレクサンドル・ステイガー/ブルーノ・ラファエリ
ナンバー     42
オススメ度     ★★★


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