こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

オットーという男

ホームセンターでクレーマーになり、自宅周りではごみ捨てや駐車ルールに厳しく、職場では同僚の気遣いに悪態をつく。いつも不機嫌で誰にも心を開こうとはしない。その原因は最愛の妻の不在。物語は、ご近所の嫌われ者だった老人が陽気な家族と交流するうちに生きる希望を取り戻していく過程を描く。片側が空いたままのダブルベッド。ひとりで取る味気ない朝食。こんな人生を終わりにしようと何度も試みるが、そのたびに脳裏によみがえる美しかった愛の記憶。だが、いつも陽気なメキシコ系一家が近所に引っ越してきたことから彼の日常は一変する。道具の貸し借りから料理や子供たちを通じての交流、人間嫌いだった男が少しずつ変わっていく過程は、地域コミュニティとの適度な付き合いこそが孤独の特効薬だと教えてくれる。

オットーが暮らす地域にマリソル一家が転居してくる。何かと頼みごとをしてくるマリソルを最初は疎ましく思っていたオットーも、頼られるうちに彼らの面倒を見るようになる。

オットーたちの住宅街は再開発の話が出ていて、住民の立ち退き話が進められている。不動産会社の強引なやり方に腹を立ててはいるが、形勢は芳しくない。その間、古くからの住民との因縁など、オットーもかつては偏屈ではなかったことが明らかになっていく。妻・ソーニャと過ごした日々は幸福で、オットーも社交的だったのだろう。オットーが厄介者になったのはソーニャの死後。悲しみに暮れている時にはれ物に触るように接してくる周囲にオットーは嫌気がさしたのだ。ソーニャとの思い出の中のオットーは好青年だっただけに、その落差に違和感を覚えた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

線路に落ちた男を救出したオットーは自分もそのまま死のうとするが、別の男に引っ張り上げられる。周りにいた若者は誰一人救助に向かおうとはせず、スマホで撮影するばかり。そして、ジャーナリスト気取りのライブ配信記者。情報機器を介してしか他人と関係を築けないミレニアル世代以降の人々の特性が象徴的に再現されていた。

監督     マーク・フォースター
出演     トム・ハンクス/マリアナ・トレビーニョ/マヌエル・ガルシア=ルルフォ/レイチェル・ケラー/トルーマン・ハンクス
ナンバー     44
オススメ度     ★★*


↓公式サイト↓
https://www.otto-movie.jp/