こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

映画ネメシス 黄金螺旋の謎

 

ラジオ体操のような型にはまった動きからカンフー演武のような流麗な動作に移ると集中力はマックスに高まる。目に映った光景をすべて詳細に記憶し、事件を解決するために脳内リプレイするヒロインの所作が美しくもキュートだ。物語は、ゲノム編集ベイビーとして生まれた女が、その情報を狙う組織と闘う姿を描く。毎夜同じ悪夢にうなされる。次々と親しい人が殺されていく。そこで出会った謎の男が昼間に現れたりする。夢なのか現なのか、繰り返される惨劇に彼女は持ち前の頭脳で対抗しようとする。ゲノムを操作することで、人間は突然変異や自然選択を経ることなく格段に進化する手段を手に入れた。だがそれは富裕層だけの特権で、貧富の格差は拡大・固定しかねない。そういった危惧を孕みながら急加速する映像は、一瞬も目が離せない。

緊縛され、同僚の風真にネックレスを奪われた上に社長の栗田が殺害されるという夢を繰り返し見るアンナ。格安で引っ越した高級マンションの壁から信じられないものを発見する。

夢の中で出会った窓という男はヒントめかした言葉だけを残して去っていく。一方で、孤児のバイク軍団に襲われたり、資金豊富な殺し屋集団に狙われたりするアンナ。積み重ねた小さな事実を検証するうちに全体像が見えてくる。ネックレスにして肌身離さず持ち歩いている自身の全ゲノム情報が狙われているのは百も承知の上で仕掛ける手の込んだ罠をはじめ、二重三重のトリックに包まれた反撃はエキサイティングだった。入江悠という監督は過去の映画の表現方法を非常によく研究しているのだろう、作品の背景やイメージしにくい文字情報を非常に分かりやすく映像化していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

黄金螺旋の法則から殺し屋たちのアジトをあぶりだしたアンナたちは最終決戦に臨む。地下室で繰り広げられるVRはまるで時空を自在に行き来するような目くるめく体験。そこに至るまでのディテールが雑だったりもするが、遺伝子工学やAIといった最先端科学をミステリーに落とし込むテクニックは冴えていた。

監督     入江悠
出演     広瀬すず/櫻井翔/勝地涼/中村蒼/橋本環奈/真木よう子/佐藤浩市/江口洋介
ナンバー     59
オススメ度     ★★★


↓公式サイト↓
https://wwws.warnerbros.co.jp/nemesis-movie/