こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

Rodeo ロデオ

目の下に大きな隈を作り髪はぼさぼさ、いつも不機嫌で礼儀を知らない。宝物のバイクを盗まれると、フリマアプリの利用者からだまし取る。彼女の瞳に浮かぶのは世間に対する不満と怒り。物語は、男ばかりのバイク集団に入団したヒロインがバイク窃盗を重ねる中で自らの居場所を見つけていく過程を描く。自己主張が強くコミュニケーション能力は低い。貧困地域で暮らしほとんど女として扱われたことはない。男になめられまいと尖った態度は崩さない。そんな彼女が憧れたのは、バイクの前輪を高く持ち上げて走る垂直ウィリー。スピードよりテクニックを競い、転倒すれすれのスリルを楽しむ男たちに加わりたいけど、なかなか認めてけれない。だが、高級バイクを盗む技術と度胸で仲間の信頼を得ていく姿は、反社集団にもジェンダー平等が浸透し始めていると教えてくれる。

盗んだバイクで曲乗り行為に参加したジュリアは、大けがをしたメンバーを介抱したのをきっかけにカイスに助けられる。彼らのアジトについていくと、ボスのドミノからバイク盗みの指令を受ける。

もちろんやさしくしてくれる男はいるが、女を快く思っていないメンバーもいる。服役中のドミノが娑婆に残した妻子の世話係を頼まれたりもするが、高級バイクを盗みだすのに成功すると、男たちからも一目置かれるようになる。裏社会の危険な仕事、女であることを少しは利用するが決して女であることに甘えたりはしない。その、男社会への挑戦的なまなざしは終始変わることはない。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

一方で、ドミノの妻や息子との時間が増すにつれ、彼らと親密さが増していく。仲のいい母子、ジュリアが生まれ育った貧困層向けアパートでは見られなかった光景なのだろう。彼らとの触れ合ううちにジュリアの中にも安らぎのような気持ちが芽生えてくる。それは実の家族からは得られなかった感情。そして、自分が計画した大仕事に向かうジュリアには、リーダーとしての責任感も芽生えている。こんな環境でも人間は成長できることに驚いた。

監督     ローラ・キボロン
出演     ジュリー・ルドリュー/ヤニス・ラフキ/アントニア・ブレジ/コーディ・シュローダー/ルイ・ソットン/ダブ・ンサマン/セバスティアン・シュローダー
ナンバー     62
オススメ度     ★★★*


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